研究課題/領域番号 |
24530101
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
荒谷 裕子 法政大学, 法学部, 教授 (80125492)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 会社法 / IFRS |
研究概要 |
平成24年度は、これまでもっぱら会計学の領域の問題として論じられてきたIFRS導入の意義と効果について、会計学におけるこれまでの議論の整理をもう一度し直した上で、改めて法律学の視点、特に会社法上の視点から、IFRSと、これまでのJAPAN GAP(日本基準)との相異との相異、およびその導入に伴う会社法上問題となりうる論点の洗い出しを行うための準備作業を行った。 具体的には、そのための作業として、まず、有力な会計学者と意見交換を行うとともに、IFRSをわが国に導入した場合には、法律学、特に会社上どのような問題が生じうるか、各大学の会社法研究者とこの問題に関する議論を行った。 また、同時に、IFRS導入によってもっとも影響を受けると思われる地方(仙台、関西、北海道)の実務家(弁護士、公認会計士等)、企業担当者からヒヤリング調査を行い、今後の実務に及ぼすと問題点についてその法律上の影響・課題等についてヒヤリングおよび意見交換を行った。 フランスをはじめとするEU諸国では、連結財務諸表については、既にIFRSを採用しているものの、単体財務諸表については、自国基準(ローカルルール)を堅持しているが、そこにはどのような背景があるのか、フランス、およびEU主要国の文献等を通じて検証を行った。また、フランス判例研究会において、フランス会社法がこの問題がどのような関心のもと処理されているのか研究、意見交換を行い、重要な成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題について、IFRS制度をわが国に導入することの可否について、国内における関係者からのヒヤリング調査、意見交換は順調に進んだ。また、会計学の領域におけるIFRSをめぐる問題と課題についても当初の予定通り文献等を通じて議論を整理し、争点を明らかにすることはある程度できたが、以下の2点の点から、研究の進捗が当初より遅れている。 まず、第一に、企業会計審議会において、現在、わが国にIFRSを導入することの可否ー強制適用すべきか否か、連単同時導入の可否ーについて検討を進めているが、当初、この制度を導入することに前向きであったアメリカの状況が、今年度、不透明になりやや後退したことや世界情勢の変化等によって、議論が遅れておりわが国でもその導入をめぐる動向が混とんとしてきた。経済界・市場関係者の間でもその導入の是非をめぐって1年目とは明らかにスタンスの違いがみられる。これは、この1年の急激な世界情勢を反映した結果であり、世界情勢を慎重に見極める作業を余儀なくされたことが研究の進捗にも少なからず影響を及ぼしている。。 第二に、中国は、平成23年度の中にIFRS導入に向けてコンバージェンスを行う予定であるとしていたため、規制当局現地に赴いてインタビュー調査を行う予定であったが、日中間の急激な政治状況の悪化に伴い、関係者との面会が難しく今年度は実現に至らなかった。 こうした要因が研究の進捗をやや遅れている要因である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の引き続き、会計学と会社法の交錯するIFRSの課題について検証を進める予定である。特に、地方の中小企業にIFRS導入の影響が大きいことを考えると、彼らの関心事が具体的には、どこにあるのか、その及ぼす影響等について、各地に精力的に赴きヒヤリング調査を進めるつもりである。原則主義が導入されることによる取締役の責任は特に重要になると思われるので、その点に特に力点をおきたいと思っている。 前年度実現しなかった中国当局、および弁護士、会計士、企業関係者等へのヒヤリング調査を今年度は実現させ、中国におけるIFRSの導入に向けた取り組み・方向性等について把握したいと考えている。 また、アジアで唯一、平成24年度から会社法によってIFRSを連単同時導入した韓国にでは、IFRSに基づく情報が出揃うことから、関係者ー韓国の規制当局、企業業経営者、監査法人、弁護士、研究者からヒヤリング調査を行うとともに、意見交換を行う予定である。 これらの研究活動を通じて、わが国における立法を考える上での示唆を得るための作業を継続していくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度実現できなかった海外における研究調査を行うとともに、昨年度十分に調査でできなかった国内、特にIFRSの影響を受けると思われる地方の中小企業を中心に会計士た弁護士など実務家から引き続き、IFRS導入の法律上の問題および課題について意見聴取・意見交換を行う予定である。そのための出張・謝礼・通信費に研究費を使用する予定である。 また、海外、特にEUの判例・論文を通じて、IFRS導入に伴う課題と展望、その方向性が見えないアメリカのIFRS導入の展望について慎重に検証を進めてゆきたいと考えていきたいと考えてので、そのために必要な文献およびデータ処理ソフト購入の費用に研究費を使用する予定である。
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