研究課題/領域番号 |
24530102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
芳賀 雅顯 明治大学, 法学部, 教授 (30287875)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 民事手続法 / 国際民事訴訟 / 国際裁判管轄 |
研究概要 |
2012年度科研費助成事業による研究成果は、以下のものである。大きく分けて(1)ドイツの判例研究、(2)日本の国際民事訴訟法に関するドイツでの報告である。 (1)ドイツの判例研究としては、以下の2本がある。 ①「客観的併合の裁判籍」石川明=石渡哲=芳賀雅顯編『EUの国際民事訴訟法判例II』101頁~123頁(信山社、2013年3月)。これは、客観的併合による国際裁判管轄を否定したドイツ連邦通常裁判所の判決をめぐるドイツでの議論、および日本の学説・判例との対比を行ったものである。 ②「国際訴訟競合における外国手続の長期化」石川明=石渡哲=芳賀雅顯編『EUの国際民事訴訟法判例II』134頁~155頁(信山社、2013年3月)。これは、国際的訴訟競合の規律に際して、外国での訴訟の進行が極端に遅い場合には、当該外国訴訟係属を考慮しなくてもよいとするドイツ連邦通常裁判所判決をめぐるドイツでの議論、および日本の学説・判例との対比を行ったものである。なお、国際的訴訟競合は、日本の国際裁判管轄と密接な関係がある。今般の国際裁判管轄立法では、国際的訴訟競合についてルール化を行っておらず、日本の国際裁判活を否定する「特段の事由」における考慮要素として外国訴訟係属を把握する立場が学説・判例において有力である。 (2)ドイツでの報告としては、ドイツ連邦共和国パッサウ大学法学部において、”Internationales Parallelverfahtren in Japan”を、ヴォルフガング・ハウ教授司会によりドイツ語での口頭報告によって2012年7月16日に行った。この報告は、日本における国際的訴訟競合の議論状況と報告者の私見を展開したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我が国における特段の事情論に至る経緯について、日本の判例や文献の収集をほぼ終え、学説との対比を行っている。 また、現在、ドイツおよびヨーロッパ民事訴訟法(ブリュッセル条約・規則)において、特段の事情論に類似する制度を導入することの可否については、おおよその検討を終えた。ブリュッセル規則(条約)の解釈として、コモンローにおけるフォーラム・ノン・コンヴェニエンスの法理を導入する意見が表明されていたが、ブリュッセル規則が明確な管轄ルールを定めていることや管轄概念の不明瞭化を防ぐ点から否定的に解されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、コモンロー諸国におけるフォーラム・ノン・コンヴェニエンスの法理の展開を辿ることである。フォーラム・ノン・コンヴェニエンスの法理は、コモンロー諸国での代表的法理論であるが、コモンロー諸国内部では、微妙な相違がある。その内容を明らかにすることが、まず、課題となる。 また、日本の特段の事情論の立法経緯、一般条項の肥大化に対する歯止め、などが課題として出てくる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費の使用は、主として外国文献の収集、および海外出張を通じて海外動向の情報収集を行ったり、外国での報告の機会を通じて日本での法状況の発信を行っていきたいと考えている。 当初の申請通りの額を満額使用する予定でいる。
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