居住用建物賃貸借に関する法規制は、戦後の深刻な住宅事情を背景とし、社会経済的弱者の保護、生存権保障の観点から行われ、居住の継続性保障と賃料規制とが中心的な原理であった。近時における住宅問題・政策の変化、住宅市場の変貌は法規制の前提条件を覆し、また、情報の質・量及び契約交渉力の格差に着目する契約法理論が発展してきた。本研究は、経済学における住宅市場の特殊性の研究、契約交渉力格差論の発展、消費者契約法による規制等を反映した法規制の方向性を考察した。契約締結の自由、意思に反して転居を強制されない権利、市場整備的規制と市場矯正的規制との区分等を指導原理とする規制が必要であるとの結論に至った。
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