補助事業期間延長が認められたため、本年度が研究期間の最終年度となった。 1. 本年度前半は、ソルボンヌ法学研究所(フランス・パリ第1大学)で在外研究に従事していたことを活かして、ヨーロッパ各地で行われたシンポジウムや学会に積極的に出席し、情報収集および人的ネットワークの形成のための活動を行った。(a)授権法律が可決されて以降フランス国内において頻繁に開催された企画された債務法改正に関するシンポジウムでは、質疑においてステークホルダーの意見が表明され、これに立案担当者が応答する形で、ときに緊張感に充ちたやりとりが展開された。利害調整のプロセスそれ自体も興味深かったが、関係者と直接対話する機会を得たことで文献資料からは得がたい知見を得ることができたことは大きな収穫であった。また、(b)ウィーンで開催されたヨーロッパ法研究所(ELI)の年次総会では、ワークショップでの議論と終了後の意見交換が極めて有益であった。 2. 一方で、研究成果をとりまとめるために、多くの時間を執筆活動に割り当てた。個別テーマごとの研究成果の状況は、以下の通りである。 ① 広告勧誘規制については、2本の論稿を公表した。さらに、Hamon法による法改正とその影響については、別に論ずる予定である。 ② ヨーロッパ消費者法およびフランス債務法改正に関する論稿を公表した。さらに、フランス民法典改正をテーマとする論文を執筆した。原稿は完成したが、諸般の事情により公表が遅れている。 ③ 欧州私法の展開および債務法の改正について、欧州委員会およびパリ商工会議所で行ったインタビューを取りまとめ、公表した。さらに、欧州連合が2015年12月に公表したデジタル・コンテンツ指令提案、オンライン物品売買指令提案について共同研究を進めており、近日中に解説を含む条文訳を公表する予定である。
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