船主責任制限法体系の理論的構築のために、海法の重要な法源の一つであり、現在ドイツで改正の議論がなされている「ドイツ海商法」について、その動向を追跡調査している。 海商法改正に関する専門家委員会の草案、法務省の草案および政府草案の流れを整理するとともに、それらに影響を与えた船主の団体などの意見書などをフォローしている。改正のポイントは多岐にわたるが、とりわけ、海上物品運送契約における運送人の責任体制を定めるハーグ・ルールとロッテルダム・ルールとのせめぎあい、および、それに関連して、責任法に対する私的自治の射程について詳細に検討している。 海上運送法制度について、ロッテルダム・ルールの導入を試みた専門家委員会草案および法務省草案を否定し、ヘーグ・ルールの維持と修正で対応する政府草案の検討は、運送人の責任の在り方を探るうえで、意義のある研究である。
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