研究の最終年度である平成26年度は、前年度までの調査を通じた研究成果を発信する計画となっていたので、前年度までの成果をまとめ、情報の発信を中心としてプロジェクトを遂行した。具体的には、著作権法・商標法・不正競争防止法に関する論文の執筆、シンポジウムでの報告などにより研究成果の発信を行った。 前年度までの調査・研究により、著作権と商標権が抵触する場面における法制度は、権利存立過程の問題として制度設計するものと、権利存立後の権利調整の問題として制度設計するものと大きく2つのタイプに分類することができることが判明した。そのうち、わが国の制度は、法改正前においても後においても後者の制度を採用しており、これは、諸外国との比較においては少数派である。この点に関して、わが国の制度に問題があるのか否かを検討したが、制度設計自体に改善の余地はあるものの大きな障害ではないことから、現行法上対応できる範囲内で著作権と商標権の調整を行うことが可能であるとの結論に至った。侵害訴訟においては、ドイツ法の採用する枠組みがわが国の現行制度と親和的であるとの示唆を得ることができた。 さらに、本研究テーマと直接関連する商標法の改正が平成26年に行われたので、法改正後においてもなお生じうる問題についても検討し、シンポジウムにおいて報告を行った。具体的には、平成26年法改正においては、新たに商標の構成要素として音が加わったことから、音に関して生じうる商標法上の問題を中心として検討を行った。この成果は改正法に関して周知する必要性があったことと、本研究テーマに直接影響する改正内容であったことからシンポジウムを開催する方法により情報発信を行った。
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