現行の知的財産法制度の多くは、いわゆる知的財産「権」という物権的な権利を付与する構成を採用しているが、これには塊としての権利を観念して情報(知的財産)取引を可能・容易にするという点にその主たる意義がある。しかし、とりわけ特許法においてはこのような物権的構成は制度の本質ではなく、むしろ特許出願人と社会(公衆)との社会的な契約としてその本質を把握すべきである。 特許の契約的構成、すなわち特許権の発生を<発明の完成・公開>と<特権の付与>との交換合意として理解し、また、特許権の侵害を公衆の一構成員による契約(不実施義務)の不履行として捉えることで初めて、特許法の理論的かる整合的な理解が可能となる。
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