本年度は、EUの地中海地域での国境管理に関する研究及びダブリン・システムに関する成果発表並びにアジアの人身取引に関する調査を行った。成果発表のうち前者に関しては、地中海における非正規な人の流入の規制と人命救助という課題の両立のために、FRONTEX(国境管理),EUROPOL(警察),EUNAVFOR MED(軍),EASO(庇護事務所)などEUの複数の機関が行動するようになっていること、しかし、それらは必ずしも人権保障を第一と考える組織ではないことを論文において指摘した。後者に関しては、ダブリン・システムは難民等の保護に関するEU諸国の負担及び責任分担の公正さという点で問題をかかえており、そのため、EUの共通庇護政策の対外的な側面の強化がよりいっそう進められるであろうことを指摘した。 後者に関しては、タイの北部チェンライのメイファラン大学社会イノベーション学部の協力を得て、ミャンマーとの国境にあるDevelopment and Education Programme for Daughters and Communities Centre in the Greater Mekong Sub-region (DEPDC/GMS)を訪問し、同センターの設立者であるKhun Sompop氏から聞き取り調査を行い意見を交わした。同氏からは、現在は移民の就労地域が地方都市へと移っていること、人身取引に多様な人々が関わっている現状について説明をうけた。同センターに対する国際的な支援という意味では、アメリカおよび日本が主でありEUのかかわりはあまりないとのことであった。同センターは子どもの保護のみでなく教育も行い、自立できる能力をつけて帰国させるという成果も得ている。この点に関しては、代表者の次の研究課題であるサーキュラー・マイグレーションの問題としてさらに研究を進めたいと考えた。
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