本研究では、EUの共通移民政策、特に国境管理政策が難民等の保護に及ぼす影響の分析を行った。本研究期間中に生じたシリア難民の大規模流入のため、地中海で外部国境を形成するギリシャはノン・ルフールマン原則や人権保障義務の違反状態に陥ったが、その際には欧州人権裁判所とEU司法裁判所が大きな役割をはたした。他方で、地中海地域における国境管理のためにEUの様々な機関が活動を行うようになったが、それらの中で難民保護と人権保障は必ずしも確保されているとはいえない。また、国境審査の厳格化とそれによるノン・ルフールマン原則違反の可能性は、現在EU内外での普遍的な事象と考えられ、長期的視点での対策が不可欠である。
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