先進諸国は、患者安全の確保に取り組んでいる。医療事故の予防、再発防止、医療における質の保証を確保できる制度が模索されている。本研究では、スウェーデンの患者安全のための法制度からの知見を下に日本における患者安全を推進するための法制度への示唆を得た。 スウェーデンでは、患者安全に関する法改革が行われ、2011年に患者安全法(2010:659)が施行された。医療・ケア監督庁(2013年設立の行政機関)は、保健・医療サービス提供者への監督を通じて、患者の安全や保健・医療サービスの質を保証しなければならない。同庁は、苦情に関し客観的な組織調査を行い、事故などの原因を解明し、再発防止を図らなければならない(患者安全法11条)。保健・医療サービス提供者(ランスティング等)には、患者の安全に組織的に取り組む義務が課されている(患者安全法3章1条から3条)。保健・医療サービス提供者は、高度な患者安全を確保するために、医療事故を生じさせたまたは生じさせえた事象を調査し、医療事故の抑止しなければならならず、現在様々な取り組みが行われている。 患者らは、医療事故等の医療における苦情を医療・ケア監督庁に申し立てることができる。また、医療・保健サービス提供者は、医療事故による深刻な傷害について医療ケア監督庁への届出義務を課されている。これらの医療事故情報は全て、医療ケア監督庁に集約され、調査権限をもって原因究明が行われ、データベース化され、医療事故防止のために役立てられている。 他方、スウェーデンは、医療者の過失を問わない医療事故補償制度の枠組みの中でも(患者損害法(1996:799))、医療事故の原因究明と再発防止のための取り組みを続けている。同制度では、医師の過失が問われないため、正確な医療事故情報を医療者から収集することが可能であり、患者安全の推進において大きな役割を果たしてている。
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