研究課題/領域番号 |
24530120
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
村上 康二郎 東京工科大学, 教養学環, 准教授 (10350505)
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キーワード | プライバシー影響評価 / PIA / 共通番号 / 国民ID / プライバシー / 個人情報保護 / 情報保護評価 |
研究概要 |
本研究は、共通番号・国民ID 時代において、プライバシー影響評価(PIA) を我が国に導入し、実施する際に生じる法的諸問題について、比較法的な観点から検討するものである。平成24年度は、我が国における問題状況の調査・検討や、PIAの実施を法的に強制するのかどうかという規制方式の問題、どのような情報システムないしプロジェクトをPIAの実施対象とするのかという実施範囲の問題などを検討したが、平成25年度も、引き続きこれらの検討を深める作業を行った。また、平成25年度は、1.PIAの対象となるプライバシーとは何かという問題、すなわちPIAの対象となる情報の範囲に関する問題、および、2.PIAにどのように第三者機関が関わるのかという第三者機関の関わり方に関する問題を重点的に検討した。これらの問題については、まず、カナダ、オーストラリア、アメリカ、イギリスなどの主要なPIA実施国における最新のガイドラインや重要文献を調査した。そして、そのような海外の議論動向を踏まえた上で、我が国における課題を考察した。すなわち、我が国において、番号法によってPIAに相当するものとして導入された特定個人情報保護評価について、諸外国において行われている一般的なPIAと比較していくことによって、その課題を検討した。なお、PIAについては、ISO/IEC JTC1 SC27/WG5において、ISO29134 (PIA methodology)という国際規格の策定が進められていることが重要である。本研究では、このISOにおける国際標準化の最新動向も踏まえた上で、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実施計画では、PIAの対象となるプライバシーとは何かというPIAの対象となる情報の範囲に関する問題や、PIAに対して第三者機関がどのように関わるのかという第三者機関の関わり方に関する問題を検討する予定であったが、おおむねこれらの問題点についての調査・検討を行うことができた。そして、平成24年度および平成25年度の調査・検討の成果は、情報ネットワーク法学会の第13回研究大会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、民間部門におけるPIAの課題について検討を行っていく予定である。本研究は、もともと共通番号・国民ID時代におけるPIAに着目したものであり、公的部門におけるPIAに重点を置いていた。しかし、国際的には、PIAは、公的部門だけではなく民間部門でも広く実施されるようになってきている。現在、我が国の政府において、パーソナルデータの利活用に関する制度の見直しが検討されているが、そこでも民間部門のPIAが検討対象にあげられている。そこで、民間の事業者が行うPIAの課題についても検討を行いたいと考えている。 また、プライバシー・個人情報保護法制のグランドデザインに関する検討を進める予定である。PIAは、プライバシーに対する影響を評価するものであるが、従来の我が国における個人情報保護法制はプライバシーを保護するものではなく個人情報を保護するものであるとされている。そのため、従来の個人情報保護法制に対して、PIAがどのような影響を与えるのか、プライバシー・個人情報保護法制全体の中で、PIAをどのように位置づけるのかといった問題について検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
図書の購入費用や文献の複写費用が予定していたよりも若干少なかったため、わずかではあるが次年度使用額が生じた。 主に、PIAやプライバシー・個人情報保護に関係する国内外の図書の購入費用や、文献の複写費用に使用する。その他、学会に参加するための旅費や、文具などの費用に使用する予定である。
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