本研究は、共通番号・国民ID 時代においてプライバシー影響評価(PIA) を我が国に導入し、実施する際に生じる法的諸問題について、比較法的な観点から研究しようとするものである。平成25年度は、PIAの対象となるプライバシーとは何かという問題、すなわちPIAの対象となる情報の範囲に関する問題、およびPIAにどのように第三者機関が関わるのかという第三者機関の関わり方に関する問題を重点的に検討したが、平成26年度も、引き続きこれらの検討を深める作業を行った。また、平成26年度は、民間部門においてPIAを実施する際の課題についても検討を行った。本研究は、もともと共通番号・国民ID時代におけるPIAに着目したものであり、公的部門におけるPIAに重点を置いていた。しかし、国際的には、PIAは、公的部門だけではなく民間部門でも広く実施されるようになってきている。また、最近では、ビッグデータに含まれるパーソナルデータの活用が注目されるようになっているが、パーソナルデータを活用した新しい情報サービスを実施する前に、それがプライバシーに対してどのような影響を与えるのかを評価するということ、つまりPIAを実施することが有効である。このように民間部門におけるPIAも重要度を増してきているが、我が国では、まだ民間部門のPIAに関する公的な枠組みが存在していないため、一部の企業が自主的に実施している程度であり、不十分な点が多い。そこで、民間の企業がPIAを実施していく際の課題についても検討を行った。
|