研究課題/領域番号 |
24530124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横田 正顕 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30328992)
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研究分担者 |
出岡 直也 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (50151486)
高橋 利安 広島修道大学, 法学部, 教授 (50226859)
岸川 毅 上智大学, 外国語学部, 教授 (60286755)
藤嶋 亮 神奈川大学, 法学部, 非常勤講師 (70554583)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 政治発展 / 戦間期 / クライエンテリズム / ポピュリズム / イベリア半島 / ラテンアメリカ / バルカン半島 / イタリア |
研究概要 |
平成24年度においては、19世紀に各国で成立した「自由主義」議会制の制度的枠組み(憲法体制)と実際上の政治慣行(非公式制度)との緊張関係を軸に、スペイン、ポルトガル、イタリア、バルカン半島諸国、ラテンアメリカ主要国の19紀以降の憲法体制及び中央政治・地方政治の歴史に関する文献・資料の収集と並行して、共同研究者各自の設定した課題に沿った事例研究が進められた。 その過程では、2012年度日本比較政治学会大会・分科会B「政治発展と非公式制度―前世紀転換期のヨーロッパとラテンアメリカ」(6月23日、於日本大学)において、岸川、高橋、藤嶋がそれぞれディスカッション・ペーパーに基づく報告を行い、これに対して出岡がコメントを行った。横田は、イベリア政治研究会(6月25日、於首都大学東京秋葉原サテライト)において、研究の中間報告を行った。 また、9月には東北大学法学研究科において、細田晴子氏(日本大学商学部)を迎え、現代スペイン政治に関する専門的知識を得るための政治学研究会が催されたが、7月に藤嶋の単著『国王カロル対大天使ミカエル軍団』が上梓されたことを受けて、12月にも別途資金の手当てにより藤嶋による研究報告が東北大学政治学研究会においてなされた。 なお、当初予定されていたメキシコにおける岸川の海外調査は諸般の事情により困難となったが、これに代わってイタリアでの高橋の調査が行われ、19世紀末~20世紀のイタリア憲政史に関する知見が深められた。 以上の研究は、イベリア半島、イタリア、バルカン半島、イタリアにおける自由主義議会制の悲劇的展開を比較政治学の視座から扱った独創性の高いものであり、また、機械的な解釈に陥りがちな政治制度論にも一石を投じるものとして重要な意味を持つ。そのような意味で、比較政治学会においても本研究の中間報告は大いに注目されたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究成果は、分担者・岸川の体調不良による海外調査計画の変更など、修正を余儀なくされた部分もあるが、日本比較政治学会における報告とフルペーパーの提出というメインの計画については滞りなく実施することができ、十分な成果を得られた。 また、旅費を圧縮することができた分について、外部講師を招いた研究会を催すなど、当初計画になかった個別計画も含めることが可能となり、共同研究の幅を広げることにも成功したと考えられる。 しかしその一方で、日本比較政治学会でのセッション以降、ディスカッション・ペーパーの内容を再検討するために、共同研究メンバーが一堂に会する機会を持てず、メール会議などに終始せざるを得なかったことは残念であり、反省すべき点であった。 本研究における共同研究メンバーの研究能力はきわめて高いが、その反面、他の共同研究や個人研究にすでに多くの労力を費やしているのが現状である。この点を踏まえて、次年度以降は早めの日程調整を試み、最終年の研究のまとめに向けて、万全の態勢を構築したいと考えている。 以上の点から、反省すべき点はあるものの、研究計画全体としては「おおむね順調に進展」と判断されるところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度においては、憲法体制と非公式制度との緊張関係という対象諸国の歴史的遺産に関する知見が、今日の構造的腐敗と政治的混乱を理解する上でどのように応用できるか、という観点から研究を発展・深化させたいと考える。 そのため、新たに付け加わった研究課題(対象国の戦後政治)に関する資料・図書の取集を続行する。横田がポルトガルでの資料収集を行う予定である。 また、個別研究による知見の統合と,研究成果の取りまとめを目的とする全体での研究会を1回もしくは2回実施し、前年度の学会分科会報告ペーパーの改訂作業と、新たに論文を書き起こす予定の横田・出岡の執筆構想について検討する。 以上のような資料取集と研究会での討議の積み重ねをもとに、各自の研究課題の公刊作業に着手するが、研究会においては包括的な理論枠組みの構築を模索し、研究結果の発表媒体についても検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、資料収集に関する最後の不足分(特にスペイン政治・政治史に関するもの)を補いながら、最終成果の発表に向けて各自が原稿を執筆し、投稿ないし寄稿を行う。 この過程の中で再度研究会を催し、これまでの研究の反省点に加えて、今後、本共同研究をどのような形で発展させることができるかについて、科研費の継続申請の可能性を持含めて討議する予定である。 研究費は、主として研究会参加のための旅費と、刊行準備に際して必要となる印刷・コピー費用(およびこれに付随した消耗品)に使用され、残額の範囲で書籍購入に充てられる予定である。
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