研究課題/領域番号 |
24530126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武田 宏子 東京大学, 教養学部, 准教授 (20622814)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換(イギリス) / 国際研究者交流(イギリス) / 日本政治 / 政治改革 / イギリス政治 / アイディアの政治 / 政治言説分析 / 言説的制度論 |
研究概要 |
本研究の目的は、言説的制度論や政治言説分析のアプローチを用いて、イギリス由来の政治アイディアやモデルが日本に翻訳・移植され、適用される過程を精査することである。3年プロジェクトの最初の年である平成24年度は、「研究実施計画」にあるように、プロジェクト実施のための基礎的な作業(関連する分野の既存の研究のレビュー、分析枠組みの構築、インタビュー調査の準備)をすることを目指した。 具体的に実施した研究の成果は以下の通りである。 1.1990年代以降の日本の政治改革に関する既存の研究(日本語/英語)を書籍の購入や文献の複写を通じて収集して、批判的に検討した。2.分析枠組みの構築のため、言説的制度論と政治言説分析の研究手法についての既存の研究(日本語/英語)を書籍の購入や文献の複写を通じて収集して、批判的に検討した。3.「二大政党制」、「ウエストミンスター型内閣モデル」、「国家戦略局」の政治モデル/アイディアの日本への紹介の過程について、新聞記事、学術雑誌、書籍の検索・収集を通じて精査を開始した。また、1990年代以降の政治学研究の動向について、政治学者にインタビューした。4.「二大政党制」、「ウエストミンスター型内閣モデル」、「国家戦略局」の政治モデル/アイディアに関する英語圏での既存の研究を書籍や文献の複写を通じて批判的に検討し、英語圏での議論の傾向を特定する試みを開始した。5.イギリス、日本における研究協力機関/者の特定、合意の取り付けなど、日本、イギリスにおけるインタビュー調査の準備を進めた。6.日本におけるインタビュー調査を開始した(現在までに2名、計3回)。7.イギリス調査のための準備の一環として、Political Studies Association (PSA) Annual Conferenceに参加し、日本の政治改革過程に関連する研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の初年度である平成24年度は、プロジェクトを施し、完了するための基礎的な作業をする計画であった。具体的には、1)1990年代以降の日本における政治改革、言説的制度論と政治言説分析の領域における既存の文献のレビュー、2)分析枠組みの構築、3)日本及びイギリスにおけるインタビュー調査の準備を行うことを主に予定しており、こうした基礎的な作業に関してはほぼ当初の計画通りに進行したと言うことができる。 研究を進める過程において、対象とする政治モデル/アイディア(「二大政党制」、「ウエストミンスター型内閣モデル」、「国家戦略局」)に関して、英語圏の政治学研究でも現在、活発に議論がなされており、研究が進んでいることに気が付いた。そこで、当初は予定していなかったが、Mark Bevir、RAW Rhodes、Matthew Flinders、Vernon Bogdanorなどの研究成果を収集し、検討する作業を研究計画に組み入れた。これにより、対象とする政治モデル・アイディアの日本への紹介や日本での流通を調査する作業に多少の遅れが生じたが、日本における議論をイギリスでの議論とより明確に比較し、検討することが可能になったので、有意義な変更であった考えている。 また、インタビュー調査に着手した点とPSAで研究発表をした点においては、当初の予定以上の進展があったと言える。特に、PSAでの発表は、対象とする政治モデル/アイディアに関する最新の研究に触れる機会となり、プロジェクトの実施の方向と進展の具合について批判的に検討し、必要な微調整を施すことに役に立ち、大変生産的な機会となった。 以上のことを鑑み、総じて言えば、おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に行った基礎的な作業を土台として、25年度はプロジェクトの中核となる作業を行っていく。具体的には以下の通りである。 1.「二大政党制」、「ウエストミンスター型内閣モデル」、「国家戦略局」の政治モデル/アイディアが日本にどのように紹介されたのか言説サンプルの収集・批判的分析を通じて精査する作業を続行していく。 2.「二大政党制」、「ウエストミンスター型内閣モデル」、「国家戦略局」のアイディアが日本国内に紹介された後、1)誰によって、2)どのように理解され、またこれらのアイディアに関して3)どのような議論が、4)どのような媒体で交わされ、最後に、5)どういった反対意見が出されたのか調査し、学会発表用の原稿としてまとめていく。学会発表は当初の予定から変更し、イギリスのPSAとする。これにより、「ウエストミンスター・システム」の変遷や憲法改正論議を研究する英語圏の研究者との交流を拡大し、フィードバックを得ることができる。 3.日本でのインタビュー調査を続行する。本年度は対象を官僚やジャーナリストなどのアクターにも拡大していくつもりである。 4.イギリス調査を行う。期間は2013年8月から9月で、現地ではシェフィールド大学社会科学部政治学科のDr Felicity Matthewsと東アジア研究学部のProfessor Hugo Dobsonからサポートを頂くことになっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
対象とする政治モデル・アイディアの日本への紹介や日本での流通を調査する作業に多少の遅れが生じたことに加え、最新版を購入するためにインタビュー調査の分析に使用するためのソフトウェアの購入を25年度に延期した。これにより24年度予算から残金が生じ、25年度に繰り越されたが、25年度中に上記の目的で使用する予定である。 その他、25年度には、イギリスでの現地調査、海外での学会報告、図書や資料の購入、消耗品購入、人件費などに対して予算が計上されており、上記の「今後の研究の推進方策」にあわせて、当初の計画通り予算を執行していく予定である。イギリス調査は現在、2013年9月に予定している。
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