研究課題/領域番号 |
24530127
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 利之 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40214423)
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キーワード | 特別区 / 特別区人事委員会 / 総合計画 / 大阪都構想 / 地方制度調査会 / 大都市制度 / 総合区 / 府市統合本部 |
研究概要 |
第1に、1974年都区制度改革による特別区長の直接公選制の導入に伴い、公選特別区長の政治指導を支える特別区の体制の強化が必要になったが、そのうち、人事・公務員制度の自立性、総合計画の自立性、の進行に関して、研究を進めた。 前者に関しては、法制上は23区が単独でそれぞれに人事委員会を置けるように法改正したことを前提に、23区全部が構成する一部事務組合という形式のなかでの、特別区人事委員会の設立、及びそれまでの経過措置に関して、関係者からの聞き取りなどの調査を進めた。後者に関しては、1970年代前後の各特別区における総合計画の策定過程及び策定内容の研究を進め、各区ごとの多様な在り方を追跡するとともに、当時の各区独自性の発揮について研究を行った。 第2に、いわゆる「大阪都構想」に関して、大阪府市統合本部における検討状況について、分析と行うとともに、国の地方制度調査会の答申を受けた地方自治法改正の大都市制度に関する検討状況に関して、分析を行った。 前者に関しては、実際の政治過程では、「維新の会」勢力の政治力の沈滞や橋下・大阪市長の辞職・出直し選挙などで膠着をしているが、少なくとも、事務サイドでの検討状況を分析した。後者に関しては、多岐にわたる第30次地方制度調査会の答申内容のうち、大都市制度部分を、大都市地域特別区設置法の議員立法を受けて、政府としてどのように対処するか、という観点から分析した。特に、「大阪都構想」の沈滞や法定協議会での政党間協議の膠着を受けて、主たるテーマは政令指定都市制度における区制度(総合区制度)に移っているので、その内容を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「大阪都構想」が研究期間内に実現するとは、国の政治家・官僚の抵抗を前提にすれば、元々考えてはいなかったことではあるが、ある程度、大阪地域では、粛々と大阪府市においては検討が進むことを想定していた。当初のもくろみでは、「大阪都構想」の検討状況における内容を、当時並行的に追跡することを考えていた。しかし、実際には、不安定な政治状況の下で、事務レベルにおける検討・企画立案自体も、円滑に進んでいない状況である。また、「大阪都構想」とは別に、区を強化する区政改革も、あまり進展していない。そのために、有意味な比較を行うことができていない状況である。 ただし、1974年の都区制度改革に関する歴史研究は、順調に進んでいる。特に、都職員配属制度の廃止から特別区人事委員会の設置までの経過期間の処理や、特別区人事委員会設置後の統一的特別区公務員制度の創設の経緯がかなり明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、1974年都区制度改革以降の特別区の強化(「自治権拡充」)の流れのなかで、2000年改革にいたる前史である清掃事業移管問題協議会を中心に、歴史研究を進めたい。 それが順調に行えれば、第2に、このような研究は、同時に制度分析への理論的な貢献も期待できる。区長公選という制度改革が、具体的にどのような政治力学を制度的に埋めもむことになるのか、そして、その後の制度改革にどのように影響を及ぼすのか、について、知見が得られるものと思われる。区長公選のときに、公選区長が政策的に遂行できる事務範囲を同時に拡充しておくワンセット論は重要かもしれないが、同時に、公選区長の存在そのものが、事務範囲の将来的な拡大の推進力となるメカニズムを明らかにすることは、時間差による二段階拡充論の可能性を広げるものと期待される。 第3に、本年の地方自治法改正を受けて、政令指定都市における区の強化方策に関して、検討を進めたい。各大都市では、直ちに法改正に呼応するとは限らないが、それに向けた検討や課題設定をどのように行ったのかを検討したい。
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