研究課題/領域番号 |
24530128
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川人 貞史 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10133688)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 議院内閣制 |
研究概要 |
本研究は,現代日本の議院内閣制の作動を,(1)近年の議院内閣制の制度改革,(2)制度の制約の中で効用最大化をめざす政治アクターの相互作用,(3)政治過程に注目しながら,理論的・実証的に研究することを試みる.具体的には,次の4つに焦点を当てる.1) リーダーシップ,政官関係,マス・メディアと内閣の存続の分析,2) 内閣と官邸の組織と運営,3) 議院内閣制と衆参ねじれ国会の関係,4) 与党内問題としての信任関係. 当該年度では,1) リーダーシップ,政官関係,マス・メディアと内閣の存続の分析,および,2) 内閣と官邸の組織と運営,を中心に,データ収集と聞き取り調査と分析に取りかかった. まず,内閣存続の数量分析を行うためのデータの収集・整備を進めた.具体的には,首相の日程データを朝日新聞の首相動静記事をもとに作成し,1980年の鈴木善幸内閣から2012年の野田佳彦内閣まで32年分をテキスト・データ・ファイルとして整理した.予備的にテキスト・マイニングの手法を用いて首相が面会する政治家・官僚を所属府省,役職をもとに分類し,接触頻度を算出して,首相がどの範囲のアクターたちとより頻繁にコミュニケーションを取り,また,どの政策分野により関心が強く,したがって首相が多くの時間をかけるかを分析する手がかりとする. 次に,内閣官房および内閣府に勤務した経験のある一般職公務員退職者の方を対象に,研究代表者,連携研究者が内閣官房の組織,運営について詳細な聞き取りを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内閣の存続分析を行うためのデータ収集に関しては,きわめて順調に進行している.首相動静データは必要な30年分についてすべて作成・整理を終えることができた. 内閣と官邸の組織がどのように整備されてきたかに関しては,内閣官房及び内閣府に勤務経験のある要職を務めた一般職公務員退職者の方から聞き取り調査できたことが収穫だった.今後も,聞き取り調査を続けていきたいと考えており,貴重な人材とのつながりができたことは,本研究にとって重要であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は,研究実績の概要で説明した1)および2)を継続するとともに,3)および4)についても,理論分析と実証分析を進め,補充のデータ収集,聞き取り調査などを行う予定である. また,2001年中央省庁再編に伴う制度変更の定性的分析を行い,首相を取り巻く官邸と内閣の制度的環境がどのように変化したか,また,首相がどれほど時間的・制度的に制約が強くリーダーシップがふるいにくいかについて,検証する. そして,特に4)について,これまで主に憲法制度として検討されてきた内閣と国会の信任関係を,政治の実態に即して,政治学的に分析する.従来,信任関係は内閣を批判する野党が提出する不信任決議案の与党による否決にのみ注目されてきたが,むしろ重要なのは,与党内が内閣支持で結束していない場合である.この時,信任関係は与野党問題ではなく,与党内問題である.この点に着目して,従来の議論を変える研究を進めたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,補充のデータ収集および入力整理のための事務作業のほか,資料の収集,購入,聞き取り調査費用などに充てる.
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