本研究プロジェクトでは、タイの王室の政治的役割について、カンボジア及びマレーシアの王室と比較しながら研究を行い、タイの王室の政治的役割を国王や他の王族の個人的な資質のみに帰すのではなく、王室を1つの制度として分析を行った。一定の民主化が行われた後の王室の政治的役割を本格的に比較した研究の蓄積はあまり多くなく、立憲君主制の比較研究のための理論的枠組みも未整備の状態にあったが、研究期間中の2014年にAlfred StepanやJuan LinzらがJournal of Democracy誌上に"Democratic Parliamentary Monarchies"と題する論文を発表し、立憲君主制の比較研究のための新たな枠組みを提示した。彼らが提示した理論的枠組みは東南アジアの立憲君主制の比較にもさまざまな示唆を与えてくれるものであったが、彼らは主にヨーロッパと中東の立憲君主制を比較しながら、考察を行ったため、東南アジアの立憲君主制の比較研究のためには、いくつかの修正を加える必要が感じられた。 このため、本研究プロジェクトは、2014年度と2015年度においては、タイ、カンボジア、マレーシアの王政の政治的役割に関する資料を精力的に収集するのと並行して、Alfred StepanやJuan Linzらよって提示された理論的枠組みを東南アジアの立憲王政の比較をするのに適したかたちに修正する作業にも力を注いだ。 研究成果の一部は、2015年日本タイ学会研究大会などで報告を行った。
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