研究課題/領域番号 |
24530131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
桐谷 仁 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30225106)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コーポラティズム / 政策形成過程 / 社会協定 / 政府能力 / 所得再分配 |
研究概要 |
本年度は、課題の「政府能力・統治制度と所得再分配」についての初年度であり、とくに、政府の政策過程について資料・データの収集とその充実をはかりつつ、その分析や考察につとめた。そのなかで、1980年代後半から90年代にかけて、イギリス等のネオ・リベラリズム路線による小さな政府論とは対照的に、EU諸国のなかでもイタリアやアイルランドなどで、利益集団を包摂するかたちでの政労使の三者協調体制による「社会協定」の政治が展開され、一見、コーポラティズムの復権ともみえるような政策レジームが、賃金政策や福祉政策など、所得再分配にかかわる政策領域において現出していることをあらためて確認し、その点について検討した。 本年度は、結果的に次の二つの点を中心に本研究を遂行した。第一に、そうした「社会協定(social pact)」やそれに関連した「社会的対話(social dialogue)」にかんする報告書やデータなどを、ILOやEUの研究機関やライブラリー等で収集し、その文献・資料についての解析や読解などを通じて、その実態や目的などの経験的な内実や意味についての把握につとめた。 第二に、そうした現実的な動向にかんする比較政治学上の理論的な意味についての研究論文、とくにコーポラティズム論という準拠枠組の妥当性をめぐる議論を整理した。つまり、そうした社会協定や社会的対話の政治をコーポラティズム論の延長上ではたして捉えられるものなのかどうか、このコーポラティズムとの連続性と断絶性をめぐる論争にかんして各種の研究論文に目を通し、その理論的・分析的な観点について理解を深めたといえる。 そして以上の社会協定の政治をめぐる議論が、政府の社会諸勢力の包摂能力と政策パフォーマンスを考えるうでの重要な視点を示唆していることを、暫定的なかたちせよ、考察できたことが、本年度の活動の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の「研究実績の概要」で述べたように、課題の政府能力に関連して、あらためて「社会協定」をめぐる資料や報告について検討したが、その分析や読解に手間取ったこと、そして、それをめぐる複雑で錯綜した研究論文の議論の整理に時間を費やし、まとまりをつけることがなかなか難しかったのが、その理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、初年度であり、また上記のように、資料報告書の収集や読解に手間をとられ、進捗がやや遅れているが、次年度は、開始二年目になるので、本年度の延長線上で研究を遂行し、当初の研究計画にほぼ沿ったかたちで、そしてペースをやや早めて、成果を公表したいと考えている。 したがって、研究計画の変更はなく、ペースをはやめることが必要であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が0の為、該当しない。
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