研究課題/領域番号 |
24530131
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
桐谷 仁 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30225106)
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キーワード | 政府介入 / 政策協調 / コーポラティズム / 社会協定 / 国家 / 所得再分配政策 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続いて、政府の政策過程に資料・データの収集とその充実をはかりつつ、その分析や考察につとめた。とくに「社会協定(social pact)」やそれに関連した「社会的対話(social dialogue)」にかんする報告書やデータなどを、EUの研究機関やライブラリー等で収集し、その文献・資料についての解析や読解などを通じて、その実態や目的などの経験的な内実や意味についての把握につとめた。 第一に、1980年代後半から90年代にかけて、イギリス等のネオ・リベラリズム路線による小さな政府論とは対照的に、EU諸国のなかでもイタリアやアイルランドなどで、利益集団を包摂するかたちでの政労使の三者協調体制による「社会協定」の政治が展開され、一見、コーポラティズムの復権ともみえるような政策協調体制が、賃金政策や福祉政策など、所得再分配にかかわる政策領域において現出していることをあらためて確認した。 第二に、さらに、それが政府介入を中心とした「国家の自律性」の観点から理解するのが肝要である点を指摘したうえで、従来のコーポラティズム論という準拠枠組の妥当性をめぐる議論との整合性について検討した。つまり、そうした社会協定や社会的対話の政治をコーポラティズム論の延長上ではたして捉えられるものなのかどうか、このコーポラティズムとの連続性と断絶性をめぐる論争にかんして各種の研究論文を整理したうえで、その理論的・分析的な意味についてやや長大な論文「社会コーポラティズムから政策協調へ?ーコーポラティズムにおける国家問題」として公刊した。 以上のように社会協定の政治をめぐる議論が、政府の社会諸勢力の包摂能力と政策パフォーマンスを考えるうでの重要な視点を示唆していることを、暫定的なかたちにせよ、発表できたことが、本年度の活動の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の「研究実績の概要」で言及したように、政府能力の問題に関連して、社会協定や政策協調など、従来のコーポラティズム概念をめぐる複雑で錯綜した議論を、政府介入や国家の自律性の観点から総括する論考の完成に手間取ったことが、その主たる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の成果を踏まえて、そうした政策協調を取り入れて、政府能力概念を精緻化して、当初の研究計画にほぼ沿ったかたちで経験的な研究に取り組みたいと考えている。 したがって、研究計画の変更はなく、ペースを速めることが肝要であると考えている。
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