研究課題/領域番号 |
24530132
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田村 哲樹 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30313985)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熟議システム |
研究概要 |
①熟議システム概念が自由民主主義体制を超える理論的射程を有することを明らかにするべく、2012年5月の政治思想学会研究大会において研究報告を行った。この報告では、ユルゲン・ハーバーマスの「複線モデル」論、ミニ・パブリックス論、そして近年ん何人かの研究者によって提案されている「熟議システム」論について、自由民主主義との関係での比較考察を行った。本報告では、熟議システム論の立場に立つことで自由民主主義的ではない熟議民主主義の構想が可能になることを主張する一方で、既存研究では、家族や親密圏などの「私的領域」を熟議の場として位置づけることに十分には成功していないこと(その意味で、自由民主主義の枠組みの超え方が不十分であること)を指摘した。この報告は、加筆・修正を経て、2013年5月刊行の政治思想学会の学会誌『政治思想研究』第13号に掲載される。 ②深刻な民族的・文化的対立によって特徴づけられる「分断社会」について、熟議民主主義の立場からどのような接近が可能なのかについて検討した。その結果は、松尾秀哉・臼井陽一郎編『紛争と和解の政治学』(ナカニシヤ出版、2013年5月15日刊行予定)に寄稿した、「熟議による『和解』の可能性」として刊行される。この論文でも、分断社会における熟議を考える場合には、自由民主主義を必ずしも前提とするべきではないことを、熟議システム論に言及しながら主張した。 ③『生涯学習政策研究 市民協働による教育行政』(悠光堂、2013年)において、「協働」概念と熟議との関係を考察し、前者には後者の契機が不可欠であるという意味での「協働の熟議化」を提案した。 ④米・ハーバード大学のJane Mansbridge教授、Archon Fung教授らを訪問し、熟議システム概念の現状と展望について意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」として、熟議システム概念を用いることで自由民主主義を熟議民主主義の下位類型として把握することができることを示すこと、および、「私的領域」をも熟議システムの要素として考えるべきことを主張することを挙げた。これらの目的は、「研究実績の概要」の①で述べた学会報告および論文で、ある程度達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、家族や親密圏を含めた非制度的な熟議民主主義についての英語論文執筆を進める予定である。 また、今後は、社会集団や社会運動が熟議システムにおいて果たす役割についても、検討していきたい。 さらに、平成25年度は、海外学会に出席し、熟議民主主義に関する最新の研究動向を把握し、自らの研究の位置づけを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の残額は、3032円であった。これは、物品の購入計画の変更によるものである。この残額は、次年度に必要な物品の購入費に充てる予定である。
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