本科研費最終年度に当たる本年度は、前年度までの議会関係者等へのヒアリング調査を再検討してまとめるとともに、研究成果の公表に向けての論文等の執筆に主たるエネルギーを費やした。これらの分析により、辻陽の単著『戦後日本地方政治史論』(木鐸社)を初め、森本哲郎の論文等、いくつかの成果を公表することができた。これらの成果では、地方自治体間における首長-議会の違いが、歴史的に形成された過程を明らかにするとともに、「各自治体固有の自治」の領域と考えられる議会における手続きや慣行が、その違いにあまり気がつかれないまま戦後初期から継続している可能性が指摘できた。また,多選首長の存在する自治体では,議会が首長と永年付き合うことによって党派を超えた関係を醸成し,比較的良好な首長-議会関係を構築してきたことも明らかになった。 さらに、本科研参加者の協力関係は今後も継続する予定である。二つの例を挙げると、研究代表者の松並潤が分担執筆していた村上弘・佐藤満編『よくわかる行政学』(ミネルヴァ書房)の改訂にあたっては、辻陽が参加して議会に関する章を新たに書き加えることになった(平成27年度中に出版予定)。森本哲郎が編者である『現代日本の政治と政策』(法律文化社)を改稿して『現代日本の政治』というタイトルで新たにテキストとして出版する計画には、本科研参加者全員が、分担執筆することになっており、本科研の成果は、これらの出版物にも反映される予定である。
|