研究課題/領域番号 |
24530136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00273748)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フィリピン / 政治 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究は、フィリピンの政治動態を、社会を構成主体の「意識」「戦略」「態度」に焦点を当てて考察する事を目的としている。民主主義制度が予期した様に機能していない要因が、その社会の権力関係、諸階層間の社会関係に求めることができるだろうという仮説に立って調査研究を進める。「政治動態」を捉える際には、更に権力関係、社会関係の直接の当事者がいかなる生活戦略、共同体意識をもち、政治行動に反映させるのか検討する必要がある。こうした問題意識から、本研究ではフィリピンの社会諸階層への多面的なインタヴュー調査を行い、彼ら主観と、制度への具体的関わりを明らかにする中で、政治動態の実態的な把握をしようとするものである。初年度の課題は、政治主体の意識についての理論的整理および、貧困層の意識と行動について実態調査を行うことである。 現地では様々な地域の様々な条件下におかれた貧困層を対象に面接調査を行う。調査では特に貧困層の「生活戦略」を掘り下げて明らかにする。さらにそれを組織する社会活動課、さらには行政に関わる政治家など、多方面の、様々な立場の人から情報収集を行うことを目指している。 初年度の平成24年度は、おもにセブ州の農家や漁民等の生活実態に関わる聞き取り調査、コミュニティ組織をするNGO職員に対するインタヴューを行った。彼ら彼女らの生活実態、および将来に対する見通し(生活戦略)についての一定の情報を得ることができた。 なお、本研究の成果の一部は、2度の国際学会(於フィリピン、於台湾)において学術報告として発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、文献によるフィリピンの政治状況に関する情報収集と、労働分野と労働に関わる生活戦略についての整理は一定程度の進展をみている。しかし、現地へ赴き面接調査をする機会と期間が計画したよりも少なく、また短かったため、情報収集が限定的となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の調査は、政治動態で中心的役割を果たしている政治家の意識と、NGOなどの市民社会組織(メンバー)の社会展望が主要な課題となる。政治家については特に地方政治に大きな影響力を持つ伝統的政治名望家political clan、および旧来の政治手法を批判する形で行政に関わる新進政治家を対象とする。調査の視点は、新しい社会状況の中で政治家がいかなる政治戦略・手法で対応しようとしているのかを明らかにすることである。 市民社会組織についてはNGOの社会展望と将来構想に焦点を当てる。市民社会、NGO論に関しては多大な蓄積のあるフィリピン大学第三世界研究所、政治学科、地方行政と市民社会との関係に蓄積のあるフィリピン大学セブ校社会科学学科等にに協力と助言を得たい。 草の根レベルの住民、また社会活動家の関わる範囲を、平成24年度で調査した貧困関連分野にとどまらず、広角化することを検討している。さらに地域的な多様性をどのように捉えるかも重要な視点であるため、ビコール、パラワン、南ミンダナオなど様々な地域への訪問と、その地方史との関連、また地域政治との関連についても整理を試みる予定でいる。 なお研究成果の一部は、マカオにおける第8回国際アジア研究大会(ICAS8)にて報告を予定でいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査にかかわる費用が多くを占めるであろう。さらに文献の収集費を確保する必要がる。また研究報告のために国内外の学術大会への参加費も必要となる。
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