研究概要 |
平成24年度においては、初期近代「ブリテン」における各地域のうち、イングランドを主な対象として、他のスコットランドやアイルランド、あるいはアメリカ植民地に対する文明論や帝国論の展開を把握することを試みた。 以上の作業の中心となったのは、フランシス・ベイコン、ジェイムズ1世(6世)、ジョン・ロック、サミュエル・ジョンソン、エドマンド・バークらによって展開された言説である。いずれも、「イングランド」に限定されない文明論と帝国論の展開が確認された。本年度は海外での資料調査が行われなかったが、この間に収集された David Armitage, Foundations of Modern International Thought (Cambridge University Press, 2013)や Sankar Muthu (ed.), Empire and Modern Political Thought (Cambridge University Press, 2012) をはじめとする研究書は、以降の研究を進めるうえでの重要な基礎文献となる。 本年度はまた、文明や作法を意味する「シヴィリティ」の概念が、「イングランド」を中心とした他地域の支配を正当化する言説のなかで、どのような使われ方をしているかの検討が進められた。5月の政治思想学会への参加は、多義的な「シヴィリティ」の理解を進めるうえでの重要な機会となった。 さらに、このような作業を進める中で、本年度はまた、当時の文明の拠点であった宮廷に加え、各地域を統合する政治的な象徴としての「君主」や「君主制」に注目し、その政治思想史的な意義を明らかにした。その成果の一部は、古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』第6巻(2013年)に収録された「君主制」に反映されている。
|