研究実績の概要 |
本研究においては、「文明の帝国」という観点から、アジアやアフリカなどに版図を広げた近代の「大英帝国」とは異なり、ウェールズやスコットランド、アイルランド、アメリカ植民地などから構成される複合的・多元的国家としての、初期近代における「ブリテン帝国」の思想史を探ってきた。 本年度においては、以上の研究の一つの成果として、論文「征服とシヴィリティ―ルネサンス期のアイルランド統治論」を、『法政研究』第82巻2,3合併号(2015年12月)に発表した。この研究はまた、6月20日に開催された九州大学政治研究会に加え、3月29日の日本イギリス哲学会研究大会のシンポジウム「イギリスの複合国家性と近代社会認識」において報告された。 本年度はまた、ホッブズのブリテン帝国論について考察を進め、9月26日の関西大学法学研究所第50回シンポジウム(「ホッブズのローマ:タキトゥスとマキアヴェッリの間で」)において、英語でのコメントを行うとともに、その内容を「ホッブズのローマ、もしくは人文主義と帝国」と題して、「政治思想学会会報」第41号(2015年12月)に掲載した。さらに、『イギリス哲学研究』第39号(2016年3月)では、スコットランド王ジェイムズ6世について、小林麻衣子氏の『近世スコットランドの王権ージェイムズ六世と「君主の鑑」』に関する書評を掲載した。 以上の諸研究により、複合的・多元的なブリテン帝国における、「文明」と「帝国」をめぐる言説の展開や、その諸相が明らかとなった。
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