医療は、疾病・老化・失業などの生活リスクを防止する、福祉国家において不可欠の機能であり、社会保障制度による経済的アクセスの保障と、医療サービス自体の充実が重要とされた。そのため戦後日本社会では量的拡張が積極的に展開された。 本研究はその原点が戦中期(1930-1945年)にあり、特に医師養成の拡大や福祉行政における市町村の主体化(総合化)が主因であることを提起した。歴史的には医療が稀少でなかったことは無いが、わが国の場合特に戦中期の軍国主義的拡張が、充分な発達を遂げる前にリベラルな福祉機能へ転化したため、早期の皆保険化など医療面の充実をもたらしたのである。
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