研究課題/領域番号 |
24530142
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
板谷 大世 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (80264919)
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キーワード | シンガポール / 英国 / 植民地 / 治安維持法 / 憲法 / 人民行動党規約 / PPSO / ISA |
研究概要 |
平成25年度(2013年度)では昨年度に引き続き、国内においては先行研究の収集・分析を行う一方で、海外において資料収集のための出張を行った。具体的には、「非常事態令(Emergency)」、公共秩序維持条令(PPSO)、国内治安法(ISA)に関する資料の収集と分析を中心に研究を進めた。国内では過年度に収集した英国公文書の分析を進める一方で、書籍や学術雑誌等からは論文、資料を中心に収集・分析を行った。また、3月には英国の国立文書館などで公文書を複写し持ち帰った。以下、こうした活動から得られた知見と、今後の課題について簡単に記す。 今年度はこうした資料の分析を通して、先の三つの法令がシンガポール政治に与えた影響について考察を深めた。具体的には、シンガポールに内政自治権を認めた1958年憲法の制定時に、シンガポールの国内治安がどのように憲法に織り込まれたのかに注目して考察した。この結果以下の2点が明らかになった。それらは、1.内政自治権を認める憲法を制定する際に、国内治安はシンガポール政府に表向きは移譲しながらも、実態としては旧宗主国である英国の意向が必ず反映される枠組みが準備されたこと、2.同時に、内政自治権獲得後に最初の政権与党となった人民行動党内では、1958年憲法の制定過程と並行して党内抗争が深刻化したが、結果的にはPPSOの重要性を認めるグループが党内での足場を固めたことである。 今回明らかになった以上の2点については小論にまとめ、近刊の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画が遅れている理由は、平成24年度と同様、英国おいて入手した資料の整理・分析に手間取っているからである。 平成25年度は、平成24年度に入手した資料の分析から先述したように一定の知見が得られたが、25年度末に入手した資料に関しては年度内に分析が終了しなかった。 このように、研究が遅れている理由は海外出張の時期が年度末に行われたことが原因であったが、平成26年度の海外出張は年度半ばに予定しており、24年度、25年度に入手した資料の分析のための時間を優先的に確保する予定である。このため、現在の遅れは致命的なものではないと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にある通り、26年度は国内および海外出張で入手した資料の整理、分析を柱に研究を進める。その一方で、一定の知見をまとめた上でシンガポールに出張し、本研究に対する現地の研究者の意見聴き取り、研究成果に反映させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実施を予定していた、シンガポールへの海外出張が行われなかったため。 平成26年度において、シンガポールへの海外出張を行う。
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