研究課題/領域番号 |
24530148
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
三浦 まり 上智大学, 法学部, 教授 (80365676)
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キーワード | 女性議員 / ジェンダー・ギャップ / ジェンダー平等 / オーラル・ヒストリー / 質的代表性 / クオータ / エリート調査 / 女性政策 |
研究概要 |
平成25年度は女性元国会議員のインタビュー調査を,南野知恵子,森山眞弓,五島昌子(土井たか子秘書),小宮山洋子,円より子の5名に対して実施し,インタビューのテープ起こしをまとめた(印刷は次年度).前年度の3名とあわせて8名の調査を踏まえ,どのように質的代表性を分析することができるのかの議論を重ねているところである. また前年度に行った国会議員対象の郵送調査の詳細な分析を行い,詳細版として取りまとめ,関係者に配布した. 研究成果発表としては,研究代表者の三浦まりが「日本におけるクオータ成立の政治的条件」を執筆し,三浦まり・衛藤幹子編『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたのか』(明石書店,2014年)に所収された.本書の出版を記念し,当科研が組織する研究会も共催として,2014年3月8日に「日本においてクオータは実現可能か」というテーマでシンポジウムを婦選会館で開催した. また,今年度は海外調査を実施することになっていたので,ニュージーランドおよびオーストラリア(シドニー・キャンベラならびにメルボルン)に出張し,女性の代表性を研究する研究者に意見を伺うとともに,女性議員を育成する女性団体にインタビューを行い,市民社会側でどのような試みが可能かを調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
郵送調査の分析に関しては,クロス集計をまとめあげ,一部統計分析を行い,さらに自由記述に関して詳細な分析を行い,性差がどのような局面で見られるのかを見いだすことができた.分析結果は詳細版の報告書として印刷・配布を行った. インタビュー調査は2年目ということもあり,質問事項に関してほぼ完成系のひな形ができあがったた.同一の質問文を用いてインタビューを実施してきたことから,最終的な比較分析がやりやすくなると思われる.今年度は自民党議員や民主党議員にも対象を広げたこともあり,所属政党の相違もより的確に認識することができた. 海外調査はニュージランドとオーストラリアという女性議員比率の高い国で実施した.それぞれ市民社会に強力なサポート体制ができあがっていること,また労働党という組織政党の存在感が強く,そこが市民社会と密接な関連を持つことで女性議員の登用が進んでいることが確認された.政党内の女性部局がなによりも中心的な役割を果たしており,その点,日本では力不足であることも分かった.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度であるので,前半にインタビュー調査を終え,必要があれば同じ対象者に2度目のインタビューを実施する.昨年までは現職にはインタビューを行ってこなかったが,新しい世代の意見も拾えるよう,今年度は現職にもアプローチする. 比較政策分析は,政策領域ごとに行うよりも,アクターに焦点を当てて分析をすることとする.ジェンダーと政治研究で注目が集まっているクリティカル・アクター理論を手がかりに,どのような資質や環境がクリティカル・アクターの誕生には必要に関する分析を進める.作業仮説としては,(1)コミットメント(議員になる前の活動歴),(2)ポジション(与党か,どの要職か),(3)ネットワーク(党内,超党派,女性団体との連携)の3つが抽出されたので,この三要因の重要性に関して分析を進める. また,性差の自覚に関して,おおむねインタビュー調査では見いだすことができなかった.なぜそのような「自覚」となるかに関しては,英語文献での議論を参考にしつつ,さらに掘り下げる必要がある. 成果発表に関しては平成26年度中にシンポジウムを開催し,そこでのフィードバックを踏まえて,最終原稿の完成としたい.平成27年秋には草稿を書き上げるつもりで,研究会を重ねる.
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次年度の研究費の使用計画 |
最後のインタビューのテープ起こし完成が次年度になってしまったため3万円ほど余らせる結果となったが,これは平成26年度早々に支払いを行う費用である. 平成25年度実施のインタビューのテープ起こし費用として使用する.
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