研究課題/領域番号 |
24530150
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岡本 三彦 東海大学, 政治経済学部, 教授 (50341011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 政治学 / 行政学 / 地方自治 / 住民参加 / アメリカ:ドイツ:スイス |
研究概要 |
本年度(平成24年度)は研究計画3ヵ年の1年目にあたることから、1.住民参加に関する先行研究の整理と、2.現地調査を実施した。まず、1.先行研究の整理では、日本と欧米諸国(アメリカ、ドイツ、スイス)の基礎的自治体における住民参加について文献にあたり理解を深めた。本研究では、住民参加を、公職選挙の投票や特定の争点に対する住民投票などの「政治参加」と、首長など執行機関による「行政参加」の両面から捉えることにしているが、本年度はそれぞれがもつ政治的社会化の機能について検討した。とくに欧米諸国で発展し、日本でも導入されつつある、基礎的自治体における住民投票や「プラーヌンクスツェレ(計画細胞)」、討論型世論調査といった「政治参加」の手法について理解を深めた。 次に、2.現地調査の実施では、平成25年3月上旬から中旬にかけてスイスのチューリヒ市、ドイツのミュンヘン市を訪問し、各地の自治体関係者、議会関係者に対して「住民参加」についてインタビューを実施するとともに、関係する多くの文献、資料を入手できた。とくに、チューリヒ市議会事務局長や元チューリヒ州議会議員、元チューリヒ市議会議員候補などにも、聞き取り調査を実施し、当地における「政治参加」と「行政参加」の状況について理解を深めることができた。あわせて各都市の関係者からは、平成25年度に予定しているインタビュー、アンケート調査への協力が快諾された。また、本研究に関係するヨーロッパ諸国での現地調査に際して、スイス・チューリヒ大学の直接民主制研究センター(アーラウ民主制研究所)からも多くの協力を得られたが、次年度のインタビュー、アンケート調査等についても、同研究所からサポートが得られることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本研究の1年目にあたるため、今後の研究の基礎として、住民参加に関する先行研究の整理と現地調査の実施を予定していた。まず、各国の地方自治体については、文献をはじめ資料を収集した。また、文献・資料にあたり先行研究を踏まえながら、日本と欧米諸国の基礎的自治体における「行政参加」と「政治参加」について理解を深めた。 続いて、現地調査では、平成25年3月に本研究の対象である西欧諸国を訪問して、自治体関係者にインタビューを実施した。当初の予定では、アメリカ、ドイツ、スイスの欧米3ヵ国の1~2都市を対象に訪問する予定であった。実際には、今年度はドイツのミュンヘン市、スイスのチューリヒ市では現地調査を実施し、「住民参加」に関して各国(各都市)の行政職員、議会関係者に、また住民に対する「市民教育」についてもインタビューができた。さらに訪問した都市については、議会関係者、行政関係者から次年度以降の研究に関して協力が得られた。とくに、ヨーロッパ諸国での現地調査に際しては、スイス・チューリヒ大学の民主制研究所から協力が得られることになった。なお、アメリカについては、複数の都市に連絡をとることで、来年度以降の研究の協力を依頼している。 帰国後は、先行研究を踏まえて、現地調査で得られた資料等を整理し、対象となる欧米諸国の自治体における「住民参加」の特徴を明らかにした。また、25年度に実施する予定であるアンケート調査の構想、及び質問項目についての検討と準備に充てた。 以上のとおり、先行研究の整理、現地調査の実施ともに、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、日本と欧米諸国の基礎的自治体における住民参加に関する制度と実際について明らかにすることを目的としている。したがって、今後も、住民参加によって住民の意思が自治体の政策過程にいかに反映されるのか、各国の基礎的自治体における制度の比較研究を進めていく。また、住民参加を、公職選挙の投票や特定の争点に対する住民投票などの「政治参加」と、首長など執行機関による「行政参加」の両面から捉えて、それぞれがもつ政治的社会化の機能について、さらに議論をすすめるとともに、政策課題に対する住民の判断能力、意思決定に不可欠な「政治的素養」を育成する「市民教育」について、日米欧諸国の基礎的自治体の現状を比較して考察する。 今後の研究推進方策としては、平成24年度の研究で得られた知見を深めるために、さらに先行研究にあたり、住民参加の制度について考察する。それとともに、日米欧諸国の基礎的自治体における「行政参加」と「政治参加」の実態を探るために、引き続き現地調査を実施する。とくに平成25年度にはアメリカの自治体でも現地調査を実施する予定である。これにより、日米欧諸国の自治体の住民、議員、首長、自治体関係者にインタビュー、あるいはアンケート調査を実施することが可能になる。その後、そこで得られたデータを基に日本の住民参加の特徴について比較、検討していく。さらに、各国の自治体における住民参加制度と政治的社会化の関係を把握するために、住民に対する「市民教育」の方法や制度化について、関係者にインタビューを実施する。 以上のような方策によって、日米欧の基礎的自治体における住民参加の制度と実際について探っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には日米欧の基礎的自治体における「住民参加」に関する先行研究の整理と現地調査の実施を予定していた。いずれもおおむね順調に進展しており、現地調査についてもヨーロッパ諸国について予定どおり実施できたが、アメリカについては現地調査を実施していない。そのため、平成24年度の直接経費の一部を平成25年度に使用することにしている。 平成25年度において研究の中心となるのは、日本と欧米諸国の基礎的自治体におけるインタビュー、アンケート調査の実施である。すでに平成24年度に現地調査を実施したスイスとドイツの基礎的自治体において、住民参加に関する調査を実施する予定である。新たに現地調査を実施するアメリカの基礎的自治体では、現地調査に加えて、インタビューとアンケート調査を実施する予定である。したがって、平成25年度の研究費の多くは旅費など現地調査と、インタビュー、アンケート調査の実施にかかることが見込まれる。 対象自治体におけるインタビュー、アンケート調査については、自治体職員には「行政参加」を中心に、また市議会議員には「政治参加」を中心に実施する予定にしている。同時に、「市民教育」に関する意識についても調査する。アンケート調査には、各国に共通して回答可能なものを基本に、一部にその国に独自の質問を入れる予定である。なお、アンケート調査は、原則として、インターネット(電子メール)を利用して対象者に配布したいと考えているが、電子メールでは、回収率が低くなる傾向があるため、郵送で調査用紙を配布することも想定している。そのために、アンケート調査用紙の作成にかかる費用や郵送料も予定している。
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