研究課題/領域番号 |
24530153
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福田 耕治 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20165286)
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研究分担者 |
福田 八寿絵 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 招聘教員 (60625119)
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キーワード | EU / 社会保護 / 成長戦略 / 経済危機 / ガバナンス / 労働市場改革 / 社会的ヨーロッパ / 高齢者 |
研究概要 |
雇用政策と社会保障政策は密接不可分で、両者を関係づけて考えなければならない。新自由主義的な経済思潮の下で構造改革や規制改革が叫ばれ、企業の市場競争力の強化の観点から「労働の柔軟化」が行われ、企業単位の正規労働者中心の雇用で成り立ってきた福祉体制は、非正規労働者の占める割合が増大するにつれ弱体化し、深刻化している。本研究では、EUのセーフティ・ネットを支える雇用、年金、医療など、雇用・労働政策と福祉・社会保護政策の密接な相互連関に着目し、錯綜する生活保障の仕組みを整理し、欧州の労働市場改革の先行事例を手掛かりに、その課題や可能性について検討した。グローバルな経済危機が生じて以来、大多数のEUの加盟国は政策の同様のセットの形成の方向に移動している。「新自由主義的」なEU統合プロセスにおいてEU雇用労働政策は新しい現実に直面した。すなわち、デンマークやオランダなどでは、フレキシキュリティ政策がある程度成功したが、日本や南欧諸国では正規社員と非正規社員との間で経済格差が拡大し、下層賃金労働者の貧困化が進行した。EUの「社会ヨーロッパ」を構築するという目標は、大幅に後退した。また、EU諸国の社会保障は、緊縮財政政策を採用することを強いられた諸国においてはより低い地位へと追い込まれた。賃金労働者は「より低い労務賃金への競争(下への競争)」を余儀なくされた。この現象は、さらに日本でも同様に生じている。EU諸国および日本は、ケインズ的福祉国家からシュンペーター的労働ポスト福祉国家へと変化した。先進国は自国の金融制度の保護を目指し銀行を救う財政援助している。リーマンショック以後(日本も1991のバブル崩壊の後に)EU諸国で類似の労働市場改革が行われた理由を考察し、グローバルな経済危機によって実施された労働市場改革はどのような人々に負担を強いるものであったかを理論的かつ実証的に分析・考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的は、ほぼ達成している。その成果は、研究代表者および研究分担者は、学会・国際シンポジューム等で報告し、研究代表者は、欧州の専門研究者との共著書、E&E社の英文図書に英語論文の形で発表した。これ以外に、藤原書店 刊行の 季刊『環』誌に、アマーブル・ソルヴォンヌ大学教授との座談会(対談)「ユーロ危機と欧州統合のゆくえ」においても経済危機との関連でEUの「社会的ヨーロッパ」と労働市場改革について議論し、日本の非正規雇用拡大問題との関連でその内容を分かり易く論じ、一般社会にも発信した。研究分担者は、3学会で異なるテーマで研究課題と係る報告を行い、査読付き論文として採択され、学会誌に近く掲載・刊行される(印刷中)。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため、欧州の学会、フローレンスのヨーロッパ大学(EUI)のコンファレンスにおいて研究成果を発表し、欧州の著名研究者たちとも議論を行い、研究を深めたい。またブリュッセルの欧州委員会本部でのインタビュー調査を行い、ブリュージュのヨーロッパ大学院大学を訪問し、最新の情報を収集して、研究論文や研究書をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
スケジュールの都合から、海外調査および欧州での研究発表を予定していた平成25年度から、翌年度(平成26年度)に延期したため、助成金使用を翌年度へ繰り越した。 欧州での現地調査および欧州大学での研究発表を行うため、助成金を使用する計画である。
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