「『昭和の大合併』再訪」を『自治総研』437号(2015年3月)に発表し、3年間の研究を締めくくった。この論文で、昭和の大合併と平成の大合併の相違を明らかにするとともに、昭和の大合併に関して、従来の研究にない3つの視点を打ち出した。 まず両合併の相違であるが、政治過程の違いが重要である。昭和の大合併においては、地方自治政策コミュニティ(自治庁+地方六団体)が町村合併を提唱し、国政政治家に働きかけて実現させた。これに対して、平成の大合併においては、国政政治家(自民党国会議員)の強い意向で合併促進策が形成・強化されていった。「当事者」である全国町村会を含む地方六団体が政府の合併促進策に強くコミットしていたかどうかが、両合併の最大の相違であるが、これまで、この点が指摘されることはほとんどなかったと言ってよい。 以上に加えて、筆者が考える本論文の貢献は、以下の3点である。 第1に、昭和の大合併の政治過程に関して、自治庁が町村側の運動を「利用」して町村合併促進法を成立させたという通説的見解の一面性を明らかにしたことである。第2に、町村合併促進法制定以前の段階で、各地に自主的な合併の動きがあり、またそれらが地域間で様相を異にしていたことを描き出すことによって、昭和の大合併が当初もっていた自主性の要素を明らかにしたことである。第3に、昭和の大合併の後期にあたる新市町村建設促進法施行下における合併の実態、とりわけ内閣総理大臣勧告の効果のほどを明らかにしたことである。第2と第3について付言すれば、従来の研究では最盛期である町村合併促進法施行下の合併にのみ焦点が当てられる傾向が強かったが、本論文は、その前後の時期を視野に収めることによって、昭和の大合併の全体像を、より的確に把握することを可能にした。
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