研究課題/領域番号 |
24530162
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
広本 政幸 広島修道大学, 法学部, 教授 (90320019)
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キーワード | 社会的ネットワーク / 住民参加型福祉 |
研究概要 |
2013年度に、二つの研究ノートを発表した。一つは、"Recent Studies of the Determinants of Welfare Expenditures by Local Governments in Japan"(『修道法学』第36巻第1号、2013年9月)である。その内容は、1990年代以降の日本の地方自治体の間に見られる福祉支出の差を決定するものを明らかにしようとする先行研究を紹介し、その傾向を示すというものである。先行研究は、地方自治体の財政状況が福祉支出を決定づけることを示す傾向があった。しかし、財政状況だけでなく、社会的ネットワーク、民生委員や社会福祉協議会の活動も、地方自治体の福祉支出に影響を及ぼす可能性があることを示した。 二つ目の研究ノートは、"Two Kinds of Residents' Acts of Supplementing Public Welfare Programs"(『修道法学』第36巻第2号、2014年2月)である。都道府県を単位とし、地方自治体の財政、社会的ネットワーク、民生委員や社会福祉協議会の状況が、どのように関係しているかを主成分分析で明らかにし、高齢者福祉や児童福祉との関係を考察した。分析の結果は、高齢者福祉の重要性が高い地域においては、社会的ネットワーク、民生委員、社会福祉協議会が充実しているが、児童福祉の重要性が高い地域においては、それらが充実していないというものであった。高齢者福祉が重要な地域においては、自然発生的な社会的ネットワークによる支援が生じやすいが、児童福祉の重要性が高い地域においては、意図的につくられる、支援を目的としたネットワークの形成が求められることを示した。 これら二つの研究ノートは、事例研究を行うにあたって、何に着目すればよいかを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度は、遅れているということになる。当初は、研究の2年目に当たる2013年度に、事例研究の一部を行うことを計画していた。しかし、2013年度は、事例研究を行うことができなかった。 地域福祉の状況から1990年代以降の日本の福祉レジームをとらえようとする場合、従来、このような方法で1990年代以降の福祉レジームをとらえようとする研究が多くなかったことを考えると、慎重に事例研究の準備をする必要があると考えた。先行研究がどのような方法をとり、どのような結果を出しているのかを見ることで、新たな分析方法の可能性を確認する必要があった。また、事例研究における着目点をどこにするのかを具体化することで、事例研究を効率的に進めることができると考えられる。 2013年度は事例研究を実施することができず、計画よりも遅れたが、2014年度に効果的で効率的な事例研究を行うための準備をすることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、日本の福祉レジームを地域福祉から捉えるための事例研究を行う。特定の地方自治体における住民による地域福祉へのかかわりを確認し、福祉レジームをとらえる試みを行う。 当初計画していたのは、地方自治体の福祉計画の策定への住民の参加を見ることで、日本の福祉レジームを捉えるということであった。しかし、福祉計画の策定は、ある一定の時期に行われるものであり、継続的な活動ではないため、地域住民の福祉へのかかわりを見るための素材としては、不十分であると考えるに至った。そこで、自然発生的なネットワークを通して実施されている住民による継続的な福祉活動と、福祉を行うことを目的にして意識的ね形成されたネットワークを通して実施されている住民による継続的な福祉活動の状況を観察することで、事例分析を行うことにした。 福祉活動を観察させていただくことを許可していただく団体、ネットワークを確保することが課題となる。社会福祉協議会からの協力を得て、団体、ネットワークを紹介していただき、自らも福祉活動を行いながら観察をする参与観察の方法を採用することも選択肢に含め、事例研究を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた事例研究を行わず、事例研究の準備のための研究を行った。そのため、事例研究のために、調査対象の地方自治体に行って、必要な調査を行うのに必要であると考えていた旅費を、あまり使う必要がなくなった。また、現地での調査に必要な物品を購入することもなかった。 2014年度は、調査対象の地方自治体で、調査を行うため、旅費と、調査のための物品を購入する費用を支出することになる。岡山県の岡山市、津山市、里庄町で、住民による福祉活動を観察することを予定している。観察の記録を残し、インタービューをする際に使うICレコーダ、関係者に配付する調査用紙の作成に必要な物品、調査用紙に記載された質問に対する回答の電算化し、分析するのに必要な物品に、助成金を使用する。
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