研究課題/領域番号 |
24530163
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
仙石 学 西南学院大学, 法学部, 教授 (30289508)
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キーワード | 比較政治学 / 経済政策 / 福祉政治 / 多国籍(中東欧) / 地域間比較 |
研究概要 |
2013年度は研究計画の2年目として、政党政治を軸として福祉と経済の連関についての検討を主に実施した。 一つは中東欧の4カ国(チェコ・ハンガリー・ポーランド・スロヴァキア)を事例として、各国における主要政党の経済政策に対する指向性とそれぞれの国における最低生活保障給付および子ども手当との連関について検討を行った。この結果として、(1)経済リベラル系の政党が影響を有する場合はいずれの給付も限定される、(2)保守・キリスト教系の政党が影響を有する場合は家族に対する給付は拡充される、(3)労働者指向の旧左派は古典的な社会保障重視でいずれにも関心を有さないが、「女性を家庭に戻す」作用があることから保守と協力して家族給付の拡大を求める場合がある、(4)中東欧では新しい価値に依拠する政党の影響力が限られていることから、最低生活保障は拡充されることが少ない、というように、政党の経済指向と福祉への態度にはある程度の連関はあることが明らかにされた。またポーランドについては「脱商品化」と「脱家族化」の視点を軸に、西欧諸国との比較の視点も踏まえながら事例分析も行い、経済構造の転換に伴う労働組合の衰退と強力な反ジェンダーアクターとしての教会の存在がポーランドにおける福祉を限定的なものとしていること、ただし教会はポーランドの少子化に危惧を有していることで、子どもを増やすような制度・政策は追求していることを確認した。なおこれらの研究の成果は公刊の遅れにより、業績公刊は2014年度となる予定である。 また本科研に関連する作業として、今年度は他地域との比較を行うための方法論についても検討し、そこからコンテクストを共有する地域の多様性を比較した上で異なる地域の比較を行うならば、地域を越えて現れる一般性と地域固有の要因の両方を確認することが可能となるという「二段階比較による地域間比較」の方法論を提起した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目として目標としていた作業のうち、経済と福祉との連関をより体系的に検討するという点を、「政党政治」を軸にして実施できたことで、一応の目標は達成されたと考えられる。ただし2年目の作業としてもう1点目標としていた他地域との比較については、方法論の検討、および「脱商品化」と「脱家族化」に関する指標を軸としたマクロな比較については実施できたものの、予定していた南東欧や他の新興民主主義地域における事例との比較は十分にすすめることができなかったため、この点で若干計画が達成できなかった部分はある。この点については最終年度において総括的な成果を上げることで、今年度の不備を補うこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は研究計画の最終年度として、福祉と経済の連関に関する包括的な成果をまとめることを目的とする。その際には、(1)これまで中東欧諸国の事例の比較を通して確認できた「連関」を、体系的な形で整理する、および(2)中東欧諸国の事例を南東欧のポスト社会主義国、あるいはラテンアメリカなど新興民主主義国の事例と比較し、中東欧の比較から得られた知見がより一般的なものとなるか、もしくは中東欧固有の要因なのかについて明らかにしていくことを、作業の中心としていく。特に後者は、今年度の作業で整理された「二段階比較による地域間比較研究」を「実践」するものとなるはずである。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた図書3冊が年度内に納入されなかったため。 購入予定の図書の代金として利用する予定である。
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