本研究は、中国・ベトナム・北朝鮮・キューバという、「残存社会主義4国」で推進されてきた「経済特区」戦略の動きを比較的な観点から把握することを目的としている。それで、計画の5年めで最終年度である今年(平成28年)には、4年間の研究を整理しながら、なるべく経済特区や周辺地域を訪問し、当地の専門家や一般の人々に会い、対象地域や国の経済に対する「現実感覚」を高めようと努力してきた。それで、中国経済特区の「発祥地」たる広広地域(広州、深セン)やその相手地域(香港、マカオ)を、また、ベトナムの南部地域(ホチミン市とPhuQuoc経済特区)を訪問することができた。文献研究と現地訪問を通じて該当地域への理解が一層深まったと感じている(政治的制約で北朝鮮には行けなかったこと、財源の制約でキューバに行けなかったことは惜しいところである)。 今までの研究から得られた知見を簡単にまとめると次のようになる。4カ国のうち、中国とベトナムは、対外開放と内部改革を同時に積極的に推進して、大きな成果を納めてきたと言える。しかし、北朝鮮とキューバは対外開放にはある程度積極的であるが、内部改革はためらっている。それで、両国の成果は大きくない。なお、キューバの場合、近来アメリカとの関係改善に成功したので、観光を中心とする経済特区の発展が予想される。ところが、北朝鮮の場合、アメリカとの関係改善にも成功していないので、今後の展望も良くない。 この研究は「現在進行形」の現象を取り扱っているので、これまでの成果を整理しながら、研究を続ける必要がある。
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