研究課題/領域番号 |
24530165
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松本 邦彦 山形大学, 人文学部, 教授 (40241682)
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キーワード | 多文化共生 / 外国人 / コリアン / 植民地 / 内鮮融和 / 同化 |
研究概要 |
○概要:戦前の内鮮融和事業と、その主導者たち(鎌田澤一郎など)の戦後の言論について資料収集を続けるとともに、在日コリアンをふくむ在日外国人をめぐる言論についての資料収集、さらに三つの地域における現在の多文化共生事業の調査を進めた。 ○戦後の多文化共生をめぐる言論の状況:高度経済成長後に在日コリアンの権利獲得運動がすすみ、社会保障や外国人登録法(指紋押捺問題)などで一定の成果が得られる一方で、在日コリアン自身のなかでも母国二ヵ国との関係、日本との関係をめぐって多様化が進み、鄭大均や呉善花に代表される“外国人としての権利拡大論”への異論が生じてきた。そうした異論と、国際的環境の変化(冷戦の終了)と在日コリアンの母国二ヵ国の変化(韓国の民主化、経済発展)にともなう戦後補償要求問題の再燃が、「嫌韓」論の背景にあることが看取されつつある。 ○多文化共生施策の事業調査については、山形県の最上地方については質問紙調査をおこなうとともに、一部の市町村については関係者への聞き取り調査をおこなった。長野県飯田市および大阪市については現地調査と聞き取り調査をおこなった。そのなかで最上地方については国際結婚による女性の移住の流れは下火になっている一方で、人口減、少子化の傾向は変わっていないこと。そして移住女性については彼女ら自身の介護(異文化介護)の問題が浮上してきていることが明らかになった。この異文化介護の点は大阪が先行している施策の分野であることも分かった。 また飯田市ではニュー・カマーとして日系ブラジル人と中国帰国者が多い地域であり、そこでは社会教育活動(公民館)が活発であることが施策の進展の背景にあることが推測されている。 ○「嫌韓」的な風潮については大阪以外の最上、飯田では目立ったものは無く、地域との関係、住民との接触の態様などが違いを生んでいることが推測されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鄭大均、呉善花などのいわば新世代の研究者、言論人については資料収集が進んだが、戦前からの内鮮融和事業を主導した人々(鎌田澤一郎など)の言論がまだ体系的に収集できていない状況である。 また、事業調査については調査結果の公表に至る予定であったが、2014年度での政治家や支援活動者への聞き取り調査の際の参考として使う予定にしている。
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今後の研究の推進方策 |
山形県最上地方と長野県飯田市、そして大阪市の三地域の住民と政治家(地方議会議員)に対する意識調査をおこなう予定である。 まずは夏までに予備調査と質問紙調査をおこなったのち、夏季~冬季休暇を利用して、了解が得られた議員について訪問、聞き取り調査をおこなっていく。 ただ、政治家の言論および、政治家に影響を与えていると思われる言論、市民団体について集中的に考察をおこなうことも重要と思われるので、意識調査は政治家についてのみとする可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
山形大学図書館を通して今年になってから注文した書籍について、事務上のミスにより、また注文したものの品切・絶版等により発注できなかったものが生じました。 あらためて今年度分として発注するとともに、品切・絶版のものについては古書による入手を計画します。
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