研究課題/領域番号 |
24530168
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
定形 衛 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20178693)
|
キーワード | 境界線 / 新しい地域主義 / 南東欧 / 東アジア / ASEANの流儀 |
研究概要 |
当該25年度においては、南東欧の境界線問題について、ブルガリア、ルーマニア、クロアチアのEU加盟にともなって、自らの国境線とその中に包摂されたEU境界線、さらに隣接する非加盟国との境界線に対する各国の政治的、経済的、安全保障上の意味と国民のそれぞれの境界線に対する文化的認識の変化について考察した。EU加盟の実現の裏面で、政治的一体性、経済活動の競争化の進展にともなう、国民の日常生活における経済生活の実態などにも研究の主眼点をおいた。 また、今年度はセルビアの政治研究所のストヤノヴィッチ上級研究員との共同研究の機会も得て、旧ユーゴスラヴィアにおける境界線問題について理論的な視角から研究を進めた。社会主義時代の時代の多民族国家における各共和国のバランス・オブ・パワー関係を重視したリアリスト的アプローチからの境界線の設定、また解体後における、国際社会の関与による新たな境界線画定構想や、解体後の新たなる「内なる境界線」の創出などにおいては「コンストラクティヴィズム」的理解の有用性を再認識することができた。 さらに南東欧諸国の加盟にともない、「新しい地域主義」との関連で、南東欧概念と諸国間協力の実態の変化を、1999年以後の「南東欧安定化」の実質的という観点から、政府、国民が「新しい地域主義」どのように認識していったかについての研究もすすめた。 東アジアについての境界線については、2015年のASEAN共同体設立との関連で、ラオス、インドネシア、ミャンマーを訪れる機会があり、「多様性の中の統一」を実践してきたこれら地域の「新しい地域主義」実現への可能性を、いわゆるASEAN-Way(ASEANの流儀)の政治哲学、政治実践の分析視角から検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は旧ユーゴスラヴィアの境界線問題に加えて、加盟を果たした南東欧諸国の境界線認識について考察を進めることができた。また、未加盟の西バルカン諸国と他の南東欧地域の境界線の意味についても見当の視座を見出すことができた。 また、前年度十分に検討ができなかった、東アジアのASEAN地域についての考察をASEAN-Wayの理念と実態の双方から検討できたことで、南東欧地域主義との比較の視座を獲得できたことはひとつの成果であった。ただ、予定していたマレーシア、タイの研究者との交流が延期されたことは残念であった。次年度の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、南東欧地域主義と東アジア地域主義の境界線研究の比較を、EU統合とASEAN統合との比較と複合的に考察していくことを目指している。それと同時に、今年度は統合を目指すASEAN諸国の実践、EU統合の拡大の実践から、日中韓三国の協力体制と協議の東アジア地域主義の可能性を探りたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度予定していた、東アジア地域の訪問調査、資料収集が延期になったため次年度使用額が生じています。 今年度は、マレーシア、タイ、ラオスへの現地訪問調査を計画しています。
|