研究課題/領域番号 |
24530170
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中嶋 啓雄 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (30294169)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ロックフェラー財団 |
研究概要 |
松本の恩師である日本におけるアメリカ研究の祖・高木八尺と、著名な政治学者・歴史家チャールズ・A・ビアード――松本が生涯、師と崇めた――とその妻メアリーとの太平洋戦争をはさんだ交友を考察した英文論文を完成させて、アメリカ学会の英文機関誌に掲載を認められた。6月に活字になる予定である。同論文に関して言えば、1920年代前半、ビアード夫妻が訪日した際にもロックフェラー財団は資金を援助しており、同財団による日米間の知的交流への戦前からの寄与の事例としても重要である。上記のビアードのアメリカ帝国論に関する論文も執筆して、書籍の一つの章として発表した。 史料収集については、ニューヨーク近郊のロックフェラー・アーカイブ・センターを訪問して、戦後、国際文化会館(東京・六本木)の各種の知的交流プログラムを先導した松本重治とロックフェラー財団の理事長を務めたジョン・D・ロックフェラー三世との間の往復書簡(1950年代初めから1960年代初めまで。それ以降は未公開)を閲読・収集した。また、1960年代半ば以降の彼らの交友の一端を垣間見る手段としてロックフェラー三世夫人と松本の家族との間の往復書簡を閲読・収集した。ロックフェラー三世は1978年、松本は1989年に逝去しているが、そこから松本が生涯、ロックフェラー三世一家と家族ぐるみの付き合いをしていたことが理解できた。 その他、アメリカ学会、日本アメリカ史学会、関西アメリカ史研究会の年次大会や例会に出席して、関連のセッションでは質疑にも加わり、学界における本研究の位置づけを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
松本重治とジョン・D・ロックフェラー三世との間の往復書簡や松本の家族とロックフェラー夫人との間の往復書簡を閲読・収集することができた。こららの書簡は未だ本格的に研究に用いられたことがない。 アメリカ学会の英文機関誌The Japanese Journal of American Studiesに投稿していた論文"Beyond War: The Relationship of Takagi Yasaka and Charles and Mary Beard"が掲載を認められ、次号(2013年)で活字になることとなった。同論文は松本の恩師・高木八尺や松本本人と当時のアメリカを代表する知識人である歴史家・政治学者チャールズ・A・ビアードやその妻メアリーとの戦前から戦後直後にかけての交友を、初めて一次史料に基づき考察したものである。 ビアードについては、「チャールズ・A・ビアードの反『帝国』論再考―――東アジア体験との関連を中心に」も執筆して、秋田茂・桃木至朗編『グローバル・ヒストリーと帝国』に収められた。
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今後の研究の推進方策 |
ニューヨーク近郊のロックフェラー・アーカイブ・センターにおいて収集した史料に基づき、英文論文の執筆を開始する。 また、ロックフェラー・アーカイブ・センターを再訪して、前年度の訪問の際、収集できなかった史料を閲読・収集する。具体的には初年度は、松本重治とジョン・D・ロックフェラー三世との間の個人的な信頼関係の検討に重きをおいたが、次年度はロックフェラー財団が組織として、長年、松本が専務理事を務めた国際文化会館(1955年開館)の各種プログラムをはじめ日本の知的交流活動にどのような意義を見出していたのか、財団の助成に関する史料を中心に収集、検討していきたい。さらに、さしあたり国内の大学図書館等で閲読可能な対日知的交流活動に関するアメリカ政府の外交文書を閲読・収集する。このようにロックフェラー財団やアメリカ政府の姿勢も俎上に載せることによって、1950年代から60年代にかけての国際文化会館のあり方を、一次史料に基づき東西冷戦の文脈にもを位置づける。 他方、太平洋問題調査会(IPR)への助成等、戦前からのロックフェラー財団の日米間の知的交流への関わりに関する史料も収集し、ロックフェラーをはじめとするアメリカの諸財団の助成活動をもっぱら戦後の冷戦のナラティブ(物語)で語る傾向の強い先行研究とは異なる視点を見出すことにも努めたい。 その上で英文論文を完成させて、アメリカ等の関連の学術雑誌に投稿する。同時にアメリカをはじめ海外の学会で研究報告を行なう機会を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度はアメリカで開催された学会への出張を家庭の都合で取り止めざるをえなかったため、若干の研究費を次年度に回すこととなった。 そのこともあり今一度、ロックフェラー・アーカイブ・センターを訪問して未見の史料を閲読・収集する。また、日本国内においても外交史料館において国際文化会館関連の外交文書、国立国会図書館においては鶴見祐輔関係文書等、数度の東京出張を通じて、関連の史料を閲読・収集する。 さらに英文論文の執筆に際して、ロックフェラー財団の対日フィランソロピー活動とアメリカ外交との関連を考察するために、本務校を含む国内の大学図書館で利用可能なマイクロ資料の形態を取るアメリカの外交文書に加えて、必要であれば首都ワシントン近郊の国立公文書館でもアメリカの外交文書を閲読・収集する。
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