研究課題/領域番号 |
24530172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺本 康俊 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (00172106)
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研究分担者 |
YULIA Mikhailova 広島市立大学, 国際学部, 教授 (00285420)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日露関係 / 外交 / 世論 / 日英米関係 / マス・メディア |
研究概要 |
平成24年度は、1907~1916年に於いて、日露両国が接近した外交政策、ロシアの新聞等のマスコミの動向などのことを研究、分析した。外交面では、1907年、日、英の新聞、ロシア『ノーヴォエ・ブレーミャ』などが、西園寺首相の日露協調への誠意ある対応を報道していたように、西園寺、林外相の積極的な意向が日露協商締結への推進要因になったこと、また、当時、日本の韓国併合の外交的影響が懸念され、本野ロシア大使がイズヴォルスキー外相についてロシア政界で最も親日的であり、突如の韓国併合がイズヴォルスキーの立場をロシア世論の攻撃、批判によって危険に陥れ、弱体化させてはならないと報告していたこと、そして、1912年には、桂が訪欧し、ロシアでココツォフ首相と会談し、ココツォフが日露戦争はロシアに悲痛の記憶を与えたが、日本に対して少しも敵愾心を起こすことはなかったこと、つまり、それは、ロシア中心部には何らの危害を及ぼさず、植民地戦争とみなしたこと、ロシア国民の大多数は戦争に反対し、日露協商に真剣に反対する者はいないことなどを率直に述べ、日露協調の意義を語っていたことなどが判明した。次に、ロシア世論の形成の面では、ロシア国立歴史資料館でサンクトペテルブルク通信社の活動について資料を収集し、分析することに着手した。同通信社はロシアにおいて日本に関する情報提供の重要な媒体であり、この通信社の電報はロシア新聞全体に掲載され、社会に普及した。第1次大戦開始以降、日露両国の軍事協力のため、日露関係は改めて重視されるようになり、日本とロシアは共同の通信社『Kokusai・Westnik』を設置したこと、サンクトペテルブルク通信社の特派員Vaskevichは電報の他に定期的に日本新聞を評論し、新聞と政治党の関係及びロシアに対する認識を特筆し、第4次日露協商に対する日本世論を詳細に分析していたことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着実に研究を進めつつあり、日露両国の国益推進に基づく外交政策が推進されたことなどだけではなく、両国の主要な人物の親日的、親露的な言動などの新たな事実などが判明した。このような実績に基づき、今後、さらに、研究対象時期の後半期を中心に、日本とロシア側の外交政策の対立から協調への変容の解明、それを分析できる日本、ロシア、イギリス、アメリカの外交原資料、そして日本、ロシアの新聞などについて、引き続き、精緻かつ多角的に調査、分析するための研究上の課題が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
主として、概ね1910~1916年の時期の日露両国が接近、協調した外交政策、新聞、世論などを調査、分析する。 特に、研究対象時期の後半期である、1910~1916年の時期の日露両国の外交政策について、日本やイギリス、アメリカの国立公文書館、ロシアの国立歴史文書館などで、さらなる外交原資料の綿密な調査、収集を予定している。また、新聞、世論の動向について、今後のロシア世論研究の課題は、サンクトペテルブルク通信社の特派員だけではなく、主要新聞の特派員の活動を調べることであり、そのために、モスクワにおけるロシア国立文学芸術資料館などで『Novoe vremia』と『Russkoe slovo』などの資料調査を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内では東京の外交資料館など、海外ではロシア、イギリス、アメリカの国立公文書館、歴史資料館などでの原資料の調査、収集のための旅費、渡航費、宿泊費などを予定している。
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