研究課題/領域番号 |
24530173
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, その他の研究科, 教授 (10248817)
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キーワード | 国際情報交換 / クリミア / ウクライナ / ロシア / プーチン / 東方パートナーシップ / マイダン革命 / トランスニストリア |
研究概要 |
計画に沿って、1.歴史研究とII.現状分析の二本立てで研究を進めた。前者については、1989年11月9日から1990年10月3日に至るドイツ再統一をめぐる諸大国の交渉過程を跡づけることで、冷戦後の欧州国際秩序創設に関する萌芽的プロセスと問題点を明らかにした。とりわけ、冷戦後の国際秩序からロシアが排除されるプロセスが明らかにされた点は、プーチン体制下のロシア外交を理解する上で有益であった。 その他、歴史研究では、第一次世界大戦後の「狭間の地政学」における「力の真空」と東欧諸国家の誕生と領土確定、「狭間の地政学」をめぐる仏伊対立、仏独対立、イギリスの宥和政策と英独欧州分割、英独ソ三つ巴外交、独ソ東欧分割、独ソ対立からドイツの単独東欧支配について研究を進めた。 他方、現状分析に関しては、東方パートナーシップ・ヴィルニスサミット市民フォーラム国際会議に出席するとともに、EU、NATO、ポーランド外務省、ウクライナ外務省、モルドヴァ外務省、再統合省などでのインタビュー調査を介して、以下の諸点を明らかにした。EUの東方パートナーシップについて、ウクライナのヤヌコーヴィッチ政権が連合協定の署名を延期した理由、その後の反政府デモとそれに続くマイダン革命の経緯と性格、本年(2014)2月18日~22日のヤヌコーヴォッチ政権の崩壊過程、ロシアによるクリミア併合の理由、国際社会による対ロシア制裁、ロシアのウクライナ政策(連邦化、親露武装勢力の分離運動支援)、トランスニストリア情勢などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年11月末からウクライナ危機が始まり、ロシア軍によるクリミア併合、ウクライナ本土における政府軍と親ロシア派武装勢力の武力対立など危機が続き、同問題が国際化したため、情勢分析に追われて歴史分析に十分な時間を割くことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のテーマである「狭間の地政学」をめぐる広域ヨーロッパ国際政治において、ウクライナ危機が最重要課題として浮上したため、本年度は同危機をめぐる広域ヨーロッパ国際政治について研究を進める。ウクライナ危機は、2003年~04年のバラ革命、コザック・メモランダム、オレンジ革命と、2008年のロシア=グルジア戦争に続く深刻な国際危機であり、冷戦後の欧州国際秩序やユーラシア国際政治に計り知れない影響を及ぼすのみならず、国際政治研究に本質的な問題を投げかけているからである。 具体的には、以下の諸点を中心に研究を進める。ウクライナの連邦制と分権化、クリミア問題とトランスニストリア問題、アイデンティティ政治やディアスポラ政治(クリミア・タタールとトルコの関係;「ロシア人世界」の概念と「人道的介入」や「保護する責任」の意義と課題)、オレンジ革命とマイダン革命の連続性と非連続性、国内政治体制と外交の連動性、とりわけロシアの権威主義体制および民主化運動とマイダン革命とのトランスナショナルな関係、ウクライナ危機の「新しい戦争」の様相、プーチン体制下のロシア外交と冷戦後の欧州安全保障体制の関連性、プーチン大統領の外交・安全保障観、グローバル時代における地政学、軍事力、制裁の効用とその限界である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は入試問題作成委員会委員長に任命されたため、入試終了まで国外研究に出ることができず、国外出張に出かけることができたのは漸く3月下旬であり、帰国が4月の年度初めになってしまったため、予算執行が遅れることになった。 今年度は、ウクライナ危機をめぐる国際政治および民族問題について研究を深めるため、ウクライナ、モルドヴァ、ルーマニア、グルジア、トルコなどで現地調査を行う予定である。その成果は、国際政治学会の部会で民族問題と安全保障について報告するとともに、ロシア・東欧学会の共通論題「ウクライナ危機をめぐる国際関係」に役立てる意向である。
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