冷戦期の米欧関係とバチカンについて、昨年度まではバチカンやイギリスを中心としたヨーロッパでの史料収集や調査を行っていたが、今年度は最終年ということで米国に主に調査に出かけた。ワシントンのナショナル・アーカイブス(国立文書館)では、国務省の史料を中心に冷戦時代のバチカンやイタリアとの関係のファイルを中心に閲覧し、米国とバチカンやバチカンがバックアップするイタリアのキリスト教民主党との密接な関係が明らかになった。イタリアの共産党の政権入りを阻止するために、米国とバチカンが共に協力関係にあったことがはっきりと読み取れる史料を入手することが出来た。また同じワシントンにある米国議会図書館の文書館には、ルーズベルト大統領とトルーマン大統領の個人特使としてバチカンに派遣されたマイロン・テーラーの書簡があり、ここでマイロン・テーラーとトルーマン、そして教皇ピウス12世、また他国、主に英国の外交官や首相、また英国国教会の聖職者などとのやり取りの文書を手に入れることが出来た。これで冷戦時代の米国とバチカンの関係がかなり明らかとなった。 これら史料収集の成果は、9月のイギリスでの国際関係史学会、そして10月の日本国際政治学会で学会報告として発表した。この学会報告は現在校正中の論文としてすでに学術関係の論文集に掲載が決定している。 そのほかバチカン市国のバチカン秘密文書館やローマのキリスト教民主党研究所では米国と英国、そしてバチカンとイタリアの冷戦時代の安全保障をめぐる協力関係を示唆する史料を入手することが出来た。 この様に本科学研究費は海外での成果発表や史料調査のために主に使用された。
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