研究課題/領域番号 |
24530175
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
青井 千由紀 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (60383494)
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キーワード | 平和活動 |
研究概要 |
実績 聞き取り調査、資料収集は計画通りに進行した。英国ドクトリンについては、国防省ドクトリン・概念・開発センターにおいて先頃完成された平和支援活動ドクトリンの最終版について説明を受け、ドクトリン改革全般の中でのその位置について説明を受けた。米国ドクトリンについては、米国政府担当者を招聘することにより(天候の事情により2014年度春まで延期をやむなくされた)、その概要の調査とし、加えて意見交換、セミナーなどを通じてさらに深く考察を行うこととした。国連ドクトリンについては、国連本部を訪れ、ドクトリン起草担当部署(国連平和維持活動局訓練・教訓部)と会合をもち、ドクトリン全般の動きについて調査・資料収集を行った。さらに、研究成果を学術書として出版するための準備もすすみ、ノルウエー国際問題研究所と代表者との共同による編纂本の出版プロジェクトが発足した。ノルウエーにおいて第一回執筆者会議が開催された。 意義 英、米ともにドクトリン改訂が一段落し、その意義が明らかになった。英国については、平和支援の概念を国連概念により近寄らせることとなった。米国においては、ドクトリン改訂全般の中でその見直しが行われたが、市民の保護が特に重要な考察点であった。国連ドクトリンにおいては、特にコンゴ、マリ、中央アフリカ共和国などでの最新の展開に伴い、ドクトリンと現場の活動との間のギャップが問題視されていることが明らかになった。 重要性 現場の活動の変遷に伴い、国連ドクトリンを見直す必要性は高く、研究する意義も大きい。また、研究成果を学術書(英語)としてノルウエー国際問題研究所と編纂し、学術的により完成度の高い形にて公表するための手続きが整った点が成果として挙げられる(出版社は海外の大学出版を中心にアプローチ中である。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、英米の平和活動ドクトリンの変遷について、現時点まででの調査がほぼ終わった。また、その方向性がドクトリン全般改訂との関連で明らかになった。また、国連ドクトリンについても、研究を順調に開始することができた。国連では平和活動ドクトリンに対する問題意識が高まっており、来年にも見直しが検討されていることが明らかになった。特に、ここ数ヶ月の現場での展開が変容し、理論と現実とのギャップに関する問題意識が非常に高まっていることが明らかになった。特に、市民の保護、政府を反乱軍から保護するための活動、安定化といった側面が重要である。また、新技術の投入(無人飛行機など)のドクトリン上の影響を考察することの重要性が明らかになった。 また、ノルウエー国際問題研究所と共同でドクトリン研究をさらにすすめ(国連及び英米を含む主要国に関して)、研究成果を学術書の形で出版するための作業を開始することが出来た。国連、英国、米国のみならず、他の安保理常任理事国及び主要要員派遣国における戦略デイベートを分析する。また、主要な事例をドクトリン上の原則の観点から分析するケーススタデイーをも含む。マリ、コンゴ、中央アフリカ共和国などにおいて国連平和活動が再度変容してきており、これらを市民の保護、対反乱、安定化の観点から分析する。また、南スーダンや東テイモールなど国家建設型PKO、リベリアなど和平合意履行型PKOなどの類型と比較しつつ理論的に分析する。
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今後の研究の推進方策 |
1)英国については資料収集はほぼ終了しているので、その意義を歴史的・理論的観点から分析する。研究代表者個人の研究論文としてまとめる。知見を研究成果としてまとめている編纂本の章担当者とシェアし、意見交換に役立てる。 2)米国についても、資料収集はほぼ終了した。また来年度、変動があるかどうか継続的にモニターすると同時に、ドクトリン全般の改訂作業が進められている折、平和活動ドクトリンの継続性と、市民の保護など関連領域との概念上のつながりについて、さらに考察する。米国ドクトリンにおける平和・安定化の概念の位置づけの史的変遷に関する学術論文の形に発展させていく予定である。 3)国連ドクトリンについては、ブラヒミ型の現行ドクトリンと現場における現実とのギャップをより深く事例研究に照らして検討する。事例は反乱からの政府の保護、市民の保護、和平合意の履行、新国家樹立の4類型に分け分析する。また、英米及び主要加盟国の平和活動の実施の現状と、今後に関する戦略レベルの議論、また、各国における平和活動の主要概念に対する認識や議論をさらに調べる。また、国連ドクトリンの改訂プロセスにおける英米の影響について、継続的に調査する。 4)研究成果公表のための編纂本出版に向けた準備。今年度中に、予算上可能であれば国連本部のあるニューヨークにおいて、実務家を交えた執筆者会議、意見交換(セミナー、シンポジウムなど)の開催を計画している(ノルウエー国際問題研究所と共催、可能であれば国連平和維持活動局後援)。出版社の特定作業を継続し、可能であれば原稿が完成する前に出版契約を結ぶ。本の編集作業を完成させる。出版社に原稿を提出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
米国ドクトリンに関する調査で研究代表者が出張する代わりに、ドクトリン起草担当者を代表者所属機関へ招聘したが、天候の状況で実施が本年度に延期になった。その分の航空券代の支払いなどに係る費用が次年度使用額として反映されている。 2014年度初め(4月)に招聘計画が実施され、既に使用されている。
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