研究課題/領域番号 |
24530175
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
青井 千由紀 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (60383494)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際協力 |
研究実績の概要 |
本研究の成果として学術書を出版する(ノルウエー国際問題研究所と共編)予定となっていたが、それヘ向けて順調に作業が進められた。本書のうち研究代表者担当部分であるイントロダクション及び結論部としての「安定化と国連平和活動」の執筆がほぼ完了し、また、他章についても担当者を決定、ほぼすべての原稿が提出済みである。本書は、本研究の枠組みに従い、平和活動ドクトリンに含有される原則、その変化、あるいは継続性に着目し、平和活動概念全般に検討を加えるものである。その際、今日の平和活動の重要事例を、平和活動原則の変遷の歴史に鑑み特定し、それをきっかけに教訓がどのように変わりうるのか、ドクトリンへの影響はどのようなものか考察する。また、国連及び主要加盟国(米、英を含む)での現状認識と、平和活動に関する政策、戦略の検討をも合わせて行い、政策研究としても汎用性のあるものとする。 本書では、予定通り、概念上の問題、主要諸国の政策、今日の重要事例それぞれを検討することができた。まず、イントロダクションにおいて平和活動のドクトリンの重要さ、役割とその概要を説明する。第二部では、P-5及び大口要員派遣国に絞り、加盟国の政策、国連平和活動の原則に関する認識、立場を検証する。ここでは、西側諸国が安定化活動に基軸を置くに至り、大口要員派遣国との思惑の違いが浮き彫りになった。第三部では、主要事例の分析とそのドクトリン上の影響を考察する。特に市民の保護、政府の保護などの側面において、和平・政治プロセスの脆弱性が及ぼす影響が明らかになった。第三部では、新しい科学技術、海洋力の使用、安定化任務が及ぼすドクトリン上の影響を検討した。 本書はこの後、出版社にて査読を経ることとなる。東京大学において研究の紹介と経過報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な最終成果である学術書の編纂作業はほぼ順調に進み、後は査読から出版へのプロセスを残すのみとなった。課題期間を1年延長しているが、それは、本書の査読と出版が平成27年度にずれ込むためである。平成27年度には査読、校正、成果発表・検討のためのシンポジウムを計画している。 平成26年度は、英国のドクトリンの改訂作業についてさらに聞き込み調査を行い、NATOに統一された平和支援ドクトリンの最終的な形態、また、特にアフガン介入終了後、平和活動への回帰の可能性と、統合アプローチなど関連概念領域の変遷について資料収集、聞き込み調査を行った。これにより本研究に係る調査(二次資料、一次資料、聞き込み調査)は完了させることができた。 また、主要な成果物である学術書の執筆、編纂作業にエフォートの大半を費やしたが、これについても、その分析の概要を決定し、執筆、編纂作業をほぼ完了させることができた。本書では、予定通り、平和活動の原則上の問題と、主要加盟国の政策、今日の重要事例、さらに技術や海洋力の使用、安定化といった新たな側面の影響を考察することができた。 平成26年度は、研究代表者担当部である学術書の結論部分の執筆が特に重要な作業であった。これについて、その概要を共著者、共編者と討議の上最終的に決定し、安定化と平和活動の行方に関する考察としてまとめることとした。本書で扱う加盟国の政策重点領域及び重要事例の検討双方を踏まえ、安定化と平和活動の関係に関して概念的問題と実施(現場)上の問題点を検討する。その上で、政策提言を行う。執筆はほぼ完了している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、もともと3年間の研究計画を一年延長したため、研究の最終年度となっている。 27年度中に査読を開始し、その後の改訂、校正、出版へと作業を進める。また、出版に際しシンポジウムを可能であればニューヨークにて開催し、そこでは実務家も交え検証結果を検討する予定である。今後の当該分野でのさらなる研究の進展、改善へ役立てる。 折しも国連では平和活動のレビュー委員会が事務総長によって指名されるなど、平和活動の現状について関心が深まっている。研究成果は広く公表し、今後の研究の改善、より関連性の深い政策提言へとつなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術書として発表予定の研究成果の編集作業は順調に進んでいるが、出版を検討しているオックスフォード大学出版会において査読へと進むのは今年度であり、そのため、次年度へ研究期間の延長を申請し、認められている。査読の結果を得てから出版へと至った場合、シンポジウムを企画しているが、それも今年度中となる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費残額は、研究成果の公表と、今後の研究に向けた成果の改善のために企画されているシンポジウムの開催に使用する予定である。何らかの事情でシンポジウムの今年度中の開催が難しい場合には、査読後出版に向けた研究を助成するための物品(書籍やコンピュータ周辺機器など)に当てられる場合もある。
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