最終年度は、研究成果としての学術書(共編著)の海外での出版に向けて、編纂作業をほぼ終了することができた。Routledge社のGlobal Institutions Series (グローバル制度シリーズ)に出版が決まり、2016年度後半から終わり頃に出版される予定である。現段階では、契約が済み、出版前最後の改訂作業が行われている。 この本は、ノルウエー国際問題研究所と共同で編纂され、研究代表者は、共編著者としてプロジェクトを率いた。本科研の研究対象であった英国、米国、国連それぞれの平和活動のドクトリン編纂を巡る利害や認識に関する研究成果に乗っ取り、さらに出版可能なレベルまで考察をを深めることができた。科研プロジェクト発足当時に予測できなかった流れとして、コンゴやマリにおける国連平和活動の変質が挙げられるが、こういった展開を踏まえ、そのドクトリン上の影響を考察するのが本書の目的である。加盟国のドクトリンの歴史と現状については、個人研究では英、米のみ取り上げたが、本書では検討対象を安保理常任理事国、主要要員貢献国にまで広げ、比較検討した。 従って、本研究の当初の目的である、英米及び国連におけるドクトリン改訂の方向性と現状、利害の認識について研究を終了し、加えてより幅広い加盟国や事例にも焦点を当てて研究を発展させることができた。また、プロジェクト発足当初は、和平合意の履行が主要な関心となるとの予測を立て、事実、英国のドクトリン改訂はそのような関心を反映させたものであったが、国連においては、上述したコンゴ、マリにおける平和活動の変質という新たな事象を受け、ドクトリンを巡る認識は結果的に異なるものとなった。そのため、成果出版では、そういったより新たな潮流も分析し、国連による安定化ドクトリンの可能性を検討している。
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