本研究は、新しい国際的課題のひとつとしてのサイバー空間の安全保障のフロンティアを開拓しようとする研究プロジェクトである。欧米での「サイバーセキュリティ」とロシア中心の「情報安全保障」とは差があるが、モスクワ大学主催の国際会議では、幅広く議論が行われていて、そこでは本プロジェクトの研究代表者および研究協力者が、トロイの木馬、情報リテラシー、サイバー空間における力の定義、ナノテクノロジーの情報安全保障への応用などのテーマで報告した。 またサイバーセキュリティの民営化に関して、ドイツの通信会社の民営化について聞き取りを進めたほか、イギリスの安全保障研究・出版におけるサイバーセキュリティの位置づけについて、代表的な研究所での情報交換を行った。さらに、サイバー空間の安全保障を含む安全保障全般の新しいアウトソーシングについて、特に軍事部門に焦点を当てて共同執筆の論文を出版した。 本研究プロジェクトにおいて、民間軍事部門については情報収集が当初予想ほど十分にはできなかったが、サイバーセキュリティについては、国際的な潮流を的確に把握できるようになったと考えている。本研究を進めるうちに、全世界的にサイバーセキュリティが軍事安全保障の重大な関心事になった。そのため、本研究プロジェクトがサイバーセキュリティと軍事安全保障との関係、およびそれらの民営化に焦点を当てたプロジェクトであったことは、むしろ時代を先取りしたものであったと言える。
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