今年度は太平洋島嶼国への実地調査としてフィジーでヒアリング調査を行った。フィジーは太平洋島嶼国のなかで中国と最も親密な関係を維持している国であり、そしてその親密な関係は西側諸国から問題視されている。 実地調査を通じて、以下のような研究結果が得られた。 2006年のクーデター以降、中国とフィジーとの関係は急速に緊密度が増した。これはフィジー政府による中国に対する働きかけによるものが大きかった。クーデターで西側諸国による厳しい制裁を受けたフィジー政府は中国に急接近したのである。 こうした経緯から、中国とフィジーとの関係は今なお良好な関係が維持されている。ソロモン諸島、トンガ王国で反中感情が高まっているのに対し、フィジーの国民の間では、反中感情、嫌中感情はそれほど強くはない。中国の海軍病院船(「平和方舟」)がすでにフィジーに寄港しているが、将来中国海軍の潜水艦などが寄港し、補給や補修をすることも取りざたされている。筆者のヒアリング調査では、海軍潜水艦の寄港、潜水艦に対する補給・補修などに対するフィジー側の反応はおおむねポジティブなものであった。 パプアニューギニア、フィジー、バヌアツ共和国は中国にとって太平洋島嶼国の三大貿易相手国となっている。中国(上海)とフィジーとの直行便が開通することが検討されているようであるが、中国人観光客がもたらす観光収入がフィジーなど太平洋島嶼国にとって大きな収入源となっていることはいうまでもない。
|