研究課題/領域番号 |
24530184
|
研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
滝澤 三郎 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (30554935)
|
キーワード | ファイナンシャルガバナンス / UNHCR / 難民 / 人道支援 / 国際政治 / Resouces-Based Bugeting / Needs-Based Budgeting |
研究概要 |
平成25年度における主要な実績は、関連書籍の検討を通しての理論枠組みの絞り込みと3つの関連論文の執筆、並びにヨルダンとレバノンにおけるUNHCRの難民人道支援の現場視察からの知見の獲得であった。理論枠組については、同年6月に発刊された日本国際連合学会の「国連研究第14号」「法の支配と国際機構」に掲載された「難民と国内避難民の保護を巡る潮流:法の支配の観点から」において使用した構成主義ならびにレジーム理論、平成26年3月に出版された墓田圭ほか編,「難民・強制移動研究のフロアンティア」所収の日本における難民第三国定住パイロット事業:難航の背景を探る」で使われた国際公共財論の経験を踏まえ、成果論文では国際公共財論に立つこととした。国際政治と人道規範の相克のなかで活動するUNHCRの姿を「財務のレンズを通して明らかにするのが本論文の狙いであるが、それを難民・国内避難民保護という国際公共財の提供における国際的負担分担問題の中に位置づけるのである。具体的方法については「今後の研究の方向」を参照。 資料収集については、平成25年の春に訪問したUNHCR本部でのミーティングのほか、同年9月のUNHCRのレバノンとヨルダンにおけるシリア難民の支援事業の現場視察から多くのものが得られた。なお、公共財論理論に基づいたもう一つの関連英語論文であるJapan's resettlement pilot program: why is it facing difficulties? については、送稿は高い評価が与えられたが、所収書籍の出版を予定していた国連大学出版部が廃止されたため、同書の刊行が大幅に遅れている。場合によっては他の学術出版物に移すことも考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は最終年度であり、成果論文の作成年である。シリア難民事業緊急支援事業など、急速に変わりつつある予算・会計数字と各国の反応などの把握に思ったより時間がかかっているが、予定通り本年度内に成果論文を作成する見通しである。
|
今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、理論枠組みは国際公共財理論に立脚するが、国際政治と人道の規範のせめぎ合いを財務のレンズを通してみることを可能にするために、さらに「操作化」を進め、データをアップデートを行い、成果論文にまとめる。 より具体的な「操作化」としては、長年にわたってUNHCRの予算策定過程で論争が繰り返されてきたResourcees-Based Budgeting(RBB:現実的に予想される寄付金収入を元に予算を組む手法)とNeeds-Based Budgeting(NBB:難民や国内避難民のニーズを反映した予算作成手法)を、それぞれ主要ドナーの政治的利益を強く反映するアプローチ、人道規範を強く反映するアプローチと見なして分析することで、UNHCRが政治と規範の間で揺れ動いてきた姿を浮き彫りにする。特に、2006年からUNHCRが採用しているGlobal Needs Assessment (GNA)アプローチとそれに基づく予算編成、寄付金収入の著しい増大を、近年の国際政治の制約の中でも人道規範の拡大に成功しつつあることの現れ(仮説)として論ずる。 本年10月のUNHCR執行理事会には再びジュネーブを訪問し、 UNHCR本部、主要ドナー、受益国政府、国際NGOとのミーティングを通して仮説の検証を行う。 成果論文の進捗状況であるが、現在は第2章のUNHCRの予算・財務の説明・分析を執筆中である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
人件費につき、規則に従っての継続的監督が難しいため,アルバイトの雇用を停止した。 2014年度の10月、UNHCR執行委員会に合わせたジュネーブ出張に使用する予定。
|