本研究のテーマは、第2次大戦後最大の人道危機であるシリア難民問題の中でその重要性を強めている。多数の難民・国内避難民の国際的保護コストをどの国がいかにして負担するか、UNHCRがどのような役割を果たし得るかという問いは、今後の国際的保護体制のあり方にとって喫緊の課題である。本研究は、難民・国内避難民を巡る国際政治と人道規範の相克を、UNHCRの財務・予算を中心とした組織的対応の観点から分析を行い、加盟国と難民申請者による国際的保護体制への「だだ乗り」が顕在化しつつあることを明らかにした。その上で、「第三国定住」と資金供与に掛かる「義務的」な責任と負担の国際的分担制度の導入を提言する。
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