平成26年度は、前年度から引き続き、1950年-70年代インドシナへのフランスの軍事・経済援助政策と、1951年10月に成立したアメリカの相互安全保障法(MSA法)に基づく同盟諸国への軍事・経済援助に関する仏米の政府史料を読み込んだ。その過程で研究対象の時期をやや広げた。それによって、フランスが、インドシナ戦争の初期1940年代後半、オランダが当時苦渋していたインドネシア独立戦争をめぐって国連が介入するのを目の当たりにして、その国連の介入のパターンがインドシナにも適用されることを恐れ、またアメリカがマーシャル・プラン等の対オランダ本国・対インドネシアへの援助を手段に圧力をかけ、オランダに妥協を迫るプロセスを懸念を持って見ていたことが明らかになった。その成果の一部を、「東南アジアにおける脱植民地化と冷戦のイデオロギー化、一九四七~一九四九年――想像上の共産主義の恐怖はいかにして生成されたか」と題する論文を執筆し、益田実他編『冷戦史を問い直す―「冷戦」と「非冷戦」の境界』(ミネルヴァ書房、近刊)において来年度中に公表できる見込みである。また脱植民地化及びフランス外務省・政府内での外交政策形成プロセスに関する研究の成果を生かして、研究発表に記載した書評を執筆した。
|