研究概要 |
「個人」、「世帯(家計)」、「国民経済(社会全体)」という3つのカテゴリーによる3層社会において、アロー型社会厚生関数を構成し、規範的判断の根源的基準を公理として定式化することが当面の目的である。平成24年度は「3層社会におけるアロー型一般不可能性定理の分析」に焦点をあてて研究を実施した。そこにおいては、世帯を従来の個人とみなして、通常の2層社会におけるアロー型社会厚生関数の分析結果を足がかりにその拡張を試みた。市場経済における代替的な政策に対する社会的評価(順序付け)の問題を,家計を基礎とするアロー型の社会厚生関数として定式化し、アローの最初の公理系:(パレート性)、(匿名性)、(独立性)から出発して、これらに修正、改良を加えることにより、市場経済の特性に対応した公理系を導出した。そして、最初の結果として、修正された公理をすべて満たすアロー型の社会厚生関数が存在しないことを確認した。この成果は、“Axiomatic characterization of aggregate consumer surplus measures as social welfare indices”TERG Discussion paper No.294, 2013年4月, 単著, 査読無 として公表した。より、具体的には当該論文中の19ページに記載されている定理2が上記の主要結果に対応する不可能性定理である。なお、次年度で研究予定であった、等価尺度の公理的分析についても予備的な結果が得られた。それらは21ページの定理3および25ページの定理4である。
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