研究概要 |
重複世代モデルの効率性と衡平性の両立性に関するShinotsuka, Suga, Suzumura and Tadenuma(2007)の研究結果と密接に関連するDubey(2010)とIsaac and Piaquadio(2013)の比較検討を行った。Shinotsuka, Suga, Suzumura and Tadenuma(2007)の重複世代モデルでは、すべての世代を対称的に扱うため時間を「二重に無限」に扱ったのに対して、Dubey(2010)は時間を0以上の整数として扱い、効率性と衡平性の両立性が歴史的に与えられる第1期の若い世代の消費に依存することを明らかにした。Dubey(2010)の得た結論が時間の取り扱いの差に由来することを、我々は明らかにした。Isaac and Piaquadio(2013)は、Shinotsuka, Suga, Suzumura and Tadenuma(2007)が採用した無羨望としての衡平性に代えて、消費配分が平等な資源配分と同程度望ましいことを要請する。この公理を均等分配保証と言う。Isaac and Piaquadio(2013)は、効率性と均等分配保証は両立可能だが、均等分配保証以外の衡平性の要請は効率性と両立しないと主張する。この主張は、Shinotsuka, Suga, Suzumura and Tadenuma(2007)が発見した重複世代モデルにおける効率性と衡平性の両立性に関する不可能性からの脱却する方向を示唆しているが、論証が不十分な点が残されているように思われる。Dubey(2010)とIsaac and Piaquadio(2013)のモデルに初期賦存量を確率変数とすることで、彼らが得た主要な結論がどのように変わるかという問題が、将来の研究課題として残されていることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メインプロジェクトを補完する第一サブプロジェクト「無限効用流列の社会的評価基準」は、重複世代経済における資源配分の社会的望ましさを比較評価する基準が構成可能かという問題の基礎なす。この分野の研究は、Asheim、Alcantud、Banerjee、Dubey、Mitraなどの先端的研究者が精力的に研究を行っている。これらの研究成果を咀嚼し、Shinotsuka(1998)やHara,Shinotsuka,Suzumura nad Xu(2008)で得られた研究成果との関係を解明することに研究の重点を置いた結果、メインプロジェクトの研究に十分時間を割くことができなかった。
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