研究課題/領域番号 |
24530193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
宇井 貴志 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (60312815)
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研究分担者 |
武岡 則男 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (80434695)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 意思決定理論 |
研究概要 |
標準的な経済理論における個人の行動は,単一の選好に基づく合理的意思決定としてモデル化されてきた.しかし現実には,個人が複数の相異なる価値基準を同時にもち,その結果,心理的葛藤に直面することがある.これが誘惑下の自制問題である.これまで主に個人のレベルで考察されてきた自制問題であるが,喫煙,過食,過剰消費などの誘惑財には,外部性が存在することが実証的に示されている.一方,理論研究をみると,相互依存関係にある複数個人の自制問題を分析する理論的枠組みは未だ考えられていない.そこで,お互いの行動が誘惑の強さに影響し合う戦略的環境下の自制行動を分析するため,新しいゲーム理論モデルを構築した. 本研究では,個人の自制問題の分析で注目を集めているGul-Pesendorferの意思決定モデルを戦略型ゲームに導入することで「自制ゲーム」を定義した.自制ゲームでは,各プレーヤーの選好がGul-Pesendorferモデルによって表現できるとし,規範的利得関数と誘惑的利得関数の2種類の利得関数を仮定する.こうした自制ゲームの公理化,適切な均衡概念の定式化,均衡存在の証明などを行った. 自制ゲームの応用として,友人効果の下での,コミットメントデバイスの需要分析を行った.通常財と誘惑財の二種類が存在する状況を考え,他人の誘惑財消費が多い時に,誘惑財からの誘惑が強くなるという仮定をおく(誘惑の友人効果).異時点間消費の例では,通常財を将来の消費,誘惑財を現在の消費などと考えればよい.このような戦略的環境下で,コミットメントデバイス(非流動性資産など)の需要が均衡でどのように決定されるか,コミットメントデバイスの価格に応じてどのように均衡と厚生がどう変化するか,などを分析した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦略的環境下の自制行動を研究するための基礎モデルを構築し,その有用性を明らかにした.この意味で,平成24年度の目的を達成したと評価する.
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今後の研究の推進方策 |
不完備情報ゲームへの拡張とその応用を行う.完備情報の場合,Gul-Pesendorferモデルによる利得関数をもつプレイヤーは,事後の誘惑が減少するように,ある行動へのコミットメントに対して強い選好を示すことが知られている.しかし,不完備情報の場合,事後の誘惑の程度が分からないため,事後に選択肢を確保しておく方が望ましい場合もあり得る.したがって.不完備情報ゲームへの拡張により,完備情報ゲームとは本質的に異なる戦略的行動を分析することが可能になる.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし.
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